資金繰りと黒字倒産の関係性。原因から解決策を考えよう!

資金繰りと黒字倒産の関係性。原因から解決策を考えよう!

黒字倒産とは経営が黒字の状態で資金繰りがうまくいかなくなること

黒字倒産とは、経営収支が黒字にも関わらず資金繰りがうまくいかなくなり、倒産してしまうことを指します。

経営が黒字にもかかわらず、資金繰りがうまくいってないというのはどこか矛盾しているように感じますが、実際はそうではありません。

黒字であったとしても、経営破綻してしまうケースは十分考えられます。

たとえば、販売先企業と売掛で取引をする場合を考えてみてください。
売掛とは、物を売ったときの料金の支払いを後払いにするということです。

この場合、販売した側は売上が立っているのにも関わらず、手元にお金がない状態が支払い期日まで続きます。

そのため、支払い期日前に別の会社から請求を受けた場合、料金を支払えないといったこともあります。

このように、順調に収益を上げていても支払いが滞ってしまうことはあります。
黒字収益が続いていても倒産のリスクはゼロではないのです。

赤字でも倒産するとは限らない

会社が倒産するかどうかは、収益が黒字か赤字かによって決まるものではありません。
つまり、経営赤字となっていても、倒産しない企業は存在します。

赤字でも倒産しない企業は、手元に資金を多く抱えています。

そのため、多少赤字が出たとしてもその手元の資金で補填できるので、会社を継続して運営できるのです。

赤字にも関わらず手元に潤沢な資金がある理由には、
・自己資金が豊富にある
・ベンチャーキャピタルなどから資金調達をした
・金融機関から多額の融資を受けている
といったことが挙げられます。

赤字が続けば手元の資金は目減りしていき、いずれは破綻します。
しかし、一度赤字になったからといって即倒産するというわけではありません。

黒字倒産をしてしまう2つの原因

黒字倒産の原因
黒字倒産の理由は、「入金と出金のタイミングが悪い」「手元の資金が極端に少ない」の2つが考えられます。

以下では、この2つの原因について詳しく解説します。

1.入金と出金のタイミングが悪い

会社を運営する際は、複数の企業と取引を行うため、入金と出金のタイミングは基本的に一致しません。

入金が先で、出金が後の場合はとくに問題はありませんが、逆に出金が先で入金が後のケースでは、手元の資金の状況によっては支払いが滞り、黒字倒産してしまう危険性があります。

たとえば、A社から100万円分の商品を仕入れ、B社に150万円分の商品を売る場合を考えてみましょう。

このとき、A社への支払いが翌月の10日、B社からの入金が翌月の20日とします。

翌月の10日時点ではB社からまだお金を回収できていないので、A社への支払いは手元の資金で行うことになります。

しかし、手元に資金が50万円しかない場合、A社に100万円を支払うことはできません。

もしA社への支払いとB社からの入金のタイミングが逆であれば、B社から150万円を受け取れるのでそのお金で難なくA社に100万円を支払うことができます。

このように、入金、出金のタイミングが少し異なるだけで、お金の流れは滞り、経営がうまくいかなくなることがあります。

2.手元の資金が極端にない

たとえ経営収支が赤字であっても、手元に多くの資金があればすぐに倒産することはありません。

逆に、毎月黒字を出していても、手元のお金が極端に少ないと、ちょっとした入金、出金タイミングのずれで支払いが滞り、倒産してしまうことがあります。

基本的に、ビジネスの現場ではその場でお金を支払うことは少なく、後払いでまとめて入金ということが珍しくありません。

そのため、支払期日まで耐えうる自己資金を確保しなければ、会社を運営していくことは難しいでしょう。

黒字倒産の解決策

黒字倒産の解決策
黒字倒産を解決する術は、「コストの削減をする」「キャッシュフローを改善する」の大きく2つの方法に分けることができます。

コストの削減を行うと、手元にある現金が少なくてもすべての支出を賄えるようになり、黒字倒産を防げます。

また、キャッシュフローを改善すると、お金がまだ回収できていないので支払いが滞るといったことがなくなります。

以下では、コスト削減・キャッシュフロー改善の具体的な方法を5つご紹介します。

1.返済交渉・契約見直しを行う

事業を営む場合、通常、さまざまな会社と取引を行うため、支出先は複数あるはずです。
この支出先と返済交渉を行うことで、お金の流出を防げます。

また契約を見直し、無駄がないかチェックすることも大切です。
これにより、一時的な資金不足が改善され、黒字倒産を免れます。

代表的な支出先として、仕入れ先、人件費、家賃、銀行や金融機関、リース会社などが挙げられます。

これらの中で最初に返済交渉、見直しを行うべき場所は銀行や金融機関です。

とりわけ金融機関から多額の融資を受けている場合は、元金の返済日を延長したり毎月の返済額を減額したり棚上げしてもらえると資金に十分な余裕が生まれます。

次に見直すべきところは、リース会社との契約です。

リース会社から事務用品や機械のレンタルをしている業者も多いですが、このリース料やレンタル料を減額して貰えれば、資金繰りは楽になるはずです。

家賃や仕入れ先への支出に関しては、支払いの延期や分割交渉を行うとよいでしょう。
ただし、仕入れ先と支払い交渉をする際は注意が必要です。

無理な注文をしたり、何度も支払いを先延ばしにしたりすると、仕入れ先からの信用が下がってしまう場合があります。

また、悪い評判が広まり、他の会社との取引に悪影響をもたらす可能性も十分考えられます。
そのため、支払い交渉は慎重に進めなければいけません。

従業員の給料を見直し、人件費を削減するという方法もあります。

しかし、賃金のカットを行うと、従業員の仕事に対するモチベーションを下げてしまいます。
場合によっては会社を離れていく社員も出てきます。

そのため、従業員としっかり話し合い、両者が納得する形を模索する必要があります。

2.資金繰り表を作成して可視化する

資金繰り表を作成して、お金の流れを可視化すると、無理な仕入れや不必要な支出をカットできます。

これにより、キャッシュフローが最適な状態に保たれ、黒字倒産を未然に防ぐことができます。

会社の資金の流れを可視化するには、損益計算書やキャッシュフロー計算書、貸借対照表といった書類を作成するとよいでしょう。

損益計算書は収益と支出、利益を記録した決算書です。

損益計算書を作成すると、損益分岐点が明確になり、経営を黒字にするために必要な具体的な売上目標が設定できます。

損益分岐点とは、赤字と黒字の境目となる点です。
損益計算書では、固定費と変動費を分けて計上することで損益分岐点を算出します。

キャッシュフロー計算書は、会社資金の変動を1年分記録した書類です。

キャッシュフロー計算書では営業でのお金の流れ、投資によるお金の流れ、財務関連のお金の流れをまとめ、キャッシュフローを視覚化します。

黒字倒産は決済日までにお金が回収できないといった資金繰りの不備が原因であり、キャッシュフロー計算書があればそのような不備をいち早く見つけ出せるでしょう。

貸借対照表とは、1年分の純資産、負債、資産をまとめた書類です。

貸借対照表を見れば、会社の資産とその資産の出所を把握でき、両者のバランスから会社の財政状況を判断できます。

このような機能を有することから、貸借対照費用はバランスシートを呼ばれることもあります。

このように、会社の資金の状況を確認できる書類はいくつか存在します。

これらの書類を総合的に判断すれば、早くからキャッシュフローのひずみを発見することができ、問題点に迅速に対応できるようになるでしょう。

3.銀行や公的機関に対しリスケを行う

リスケとは、金融機関に返済の先延ばしや減額の依頼をすることです。

リスケも以前よりは難しくなっていますが、しっかりとした「経営改善計画書」を提出した場合はリスケに応じてくれる可能性が高いです。

ただし、単に資金繰りが苦しいからという理由でリスケしたいと願い出ても、応じてくれない可能性が高いでしょう。

なぜなら、金融機関側からすると、支払いを延期したところで本当に返済してくれるのかどうか確証が得られないからです。

リスケを成功させるためには、この先もちゃんと返済できる明確な根拠を示す必要があります。

たとえば、今後コストダウンを行うので年間●●万円のキャッシュフローは改善する、在庫を●●万円削減するので資金不足は解消するといった場合、金融機関側としても回収の見込みがあるので、リスケを行っても問題ないと判断されます。

リスケを行う際は、事前に資金繰りの問題点と具体的な改善点を資料にまとめて、「経営改善計画書」として提出します。

4.在庫を少なくする(資産の現金化)

ビジネスを行ううえで、何かしらの在庫を抱えることがありますが、この在庫を少なくすれば黒字倒産のリスクを下げられます。

在庫とは、つまり現金を物に変えた結果です。
多くの在庫を抱えるということは、資金の多くを在庫という形で保有することを意味します。

しかし、在庫は現金のように料金の支払いに使用できるわけではないので、使い勝手が悪くなります。

在庫を減らせば、当然、手元に残る現金は増えます。
そのため、多少支払いが前後しても耐えられるようになり、キャッシュフローが滞ることはなくなります。

これは、在庫だけではなく土地などのさまざまな形態の資産についても当てはまります。

黒字倒産の原因の多くは十分な資産を保有しているものの、現金のように流動性の高い資産が少なかったことが関係しています。

黒字倒産を避けるためには、資産を現金化するなどして流動性の高い資産を保有しておくことが大切です。

5.買掛、売掛金の回収期限を見直す

買掛金や売掛金の支払いタイミングを見直すことで、黒字倒産を防ぐことができます。

支払いの順番としてよくない例が、買掛金が先で、売掛金の回収が後になることです。

このような順番になってしまうと、販売料金を受け取る前に他社から支払い請求を受けてしまうので、手元に資金を多く用意しておかなければいけなくなります。

これとは逆に、売掛金の入金が先になると料金を受け取った後に支払いをするといった流れになるので、手元の資金が少なくても資金繰りがうまくできるでしょう。

支払期日を少し移動させるだけでもキャッシュフローは改善されます。

買掛、売掛金の回収期限を見直し、手元の資金が少なくても資金を回せる最適なタイミングを探しましょう。

洲山【代表:喜多洲山】プロフィールページはこちら

負債30億円で破綻寸前からの事業再生・復活を経営者として体験したので、社長の目線で物事を見て判断できる強みが持ち味です。
したがって、的確なアドバイスが出来ると自負しています。

<主な著書>
幻冬舎刊「あなたの会社をお救いします-事業再生総合病院」
出版文化社刊「事業再生家―会社が蘇った奇跡の物語」
PHP刊共著「ハイリスク金融商品に騙されるな」
ダイヤモンド社刊共著「社長最後の大仕事。借金があっても事業承継」

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