資金繰りをどのようにするのかは、企業の存続において非常に重要なことです。
資金がなくなってしまえば倒産せざるを得ません。
資金のことに無頓着でいると、いきなり倒産してしまう、なんてことも考えられるでしょう。
そこで、今回は資金繰りが苦しくなってしまう原因と悪化を防ぐ方法、そして苦しくなる前にできる対策をみていきましょう。
- 資金繰りが苦しい原因
- 1.売り上げの急な増加
- 2.売り上げの急な減少
- 3.在庫の増加
- 4.売掛債権の貸し倒れ
- 5.売掛債権の未回収
- 6.過剰投資
- 7.借用金が多い、返せない
- 8.社内の収支に対する低意識
- 資金繰りの悪化を防ぐには?
- ・黒字化を目指す
- ・収益が見込めない資産を売却する
- ・未払いの回収をする
- ・外注への支払期間を延ばす
- ・返済優先順位を考える
- ・資金繰りがうまくいかなくなる前に
- ・資金繰り表で現状を把握しよう
- ・専門家に相談しよう
資金繰りが苦しい原因
資金繰りが苦しくなる原因はたくさんあります。ここでは、8つの原因を紹介します。
1.売り上げの急な増加
売り上げが上がると、一見資金は潤沢になるというイメージがありますが、実は急な増加は資金繰りを苦しくする原因です。
多くの企業は「掛取引」で商売をしています。
掛売りの売り上げが増えると、売掛金や受取手形といった「まだ利益を受け取っていない売り上げ」が増えるのです。
数か月後には入金されるでしょうが、その間に人件費や経費、仕入れ資金などは支払わなければなりません。
売り上げが増えたということは仕入れも増やさなくてはならないですし、忙しかった分人件費もかさむようになるなど入金される前に支出が増加し、資金繰りが苦しくなってしまいます。
2.売り上げの急な減少
今までの売り上げが当たり前と思って経営をしていると、急に売り上げが減少すると資金繰りも急に苦しくなってしまいます。
いつもの売り上げに対する仕入れ量、人件費をかけていたところ、急な売り上げ減少で利益が減ってしまうと、売り上げに対して支払いが大部分を占めるようになっていきます。
徐々に減少する場合は、仕入れや人件費も削減して対策を立てることができるのですが、急な減少は手立てがなく、一気に資金難を招いてしまうでしょう。
3.在庫の増加
売り上げの増加と同時に起こりやすい原因なのですが、売り上げが増えると同時に在庫も多く確保しなくてはなりません。
在庫が増えれば仕入れ先に支払わなければならない費用も増え、資金繰りに影響が出ます。
またすべて売れたらよいのですが、在庫を増やしてから売れなくなってしまった場合、在庫は残るでしょう。
残っている在庫を保管するスペースや管理する人員のためにも費用がかかり、売り上げの減少で利益も少なくなれば、ますます資金繰りは悪化します。
4.売掛債権の貸し倒れ
売掛債権の貸し倒れとは、売ったけれどまだ入金がない掛け売りをしていた状態で、売った相手が倒産してしまった場合に発生する問題です。
売ったのに入金がない状態なので、かなりの損失が出てしまいます。
損失が結果として資金繰りにも大きな影響をもたらすでしょう。
5.売掛債権の未回収
売掛債権の貸し倒れと似ていますが、未回収は「倒産はしていなくても入金がない状態」が続くことを指します。
当然未入金なので本来得るべき利益が得られておらず、資金不足でやり繰りが難しくなるでしょう。
6.過剰投資
会社が順調で資金が潤沢にあると、資金を使ってより利益を増やしたいと思うのは当然のことです。
不動産投資や株式投資はよくある投資方法であり、投資がうまくいって会社の利益よりも投資で得る利益のほうが多いという会社もあります。
しかし、投資は必ず利益を生むものではありません。
そのため、大きな利益を得たいために多額な投資をしてしまったり、投資のために借り入れしたりしてから投資で利益が出なくなってしまっては大変です。
過剰投資をして思ったよりもリターンが少ないとなると、会社の資金繰り事態も悪化してしまうでしょう。
7.借用金が多い、返せない
会社でお金が必要になった場合、すぐに借りてしまうような状態が続いていると、資金繰りも悪化します。
借用書が多く、返すことができない借入金が多くある場合は、売り上げもすべて返済に回ってしまい、金銭的なピンチに陥ってしまうでしょう。
8.社内の収支に対する低意識
会社を経営していくにあたって、社内の収支を知っておくことは非常に重要です。
収益が少なければその分支出をできるだけ少なくできるように努めなくてはいけません。
しかし、社内の収支に関してあまり把握しないままでいると、収益に見合った以上の支出をしてしまったり、収益が見込めないのに投資をしてしまったりと会社の資金繰りをより悪化させる事態を招いてしまいます。
資金繰りの悪化を防ぐには?
資金繰りが怪しくなってきたときには、さらに悪化してしまわないように立て直しが急務です。
では、どのようにして資金繰りの悪化を防ぐとよいのか、詳しくみていきましょう。
黒字化を目指す
資金繰りの悪化を防ぐための最大の方法が、黒字化を目指すことです。
黒字化するためには「売り上げを上げる」「コストを下げる」という2つの方法があります。
売り上げを上げることに対する取り組みは得意な経営者も多いのですが、あまり金銭のことにかかわってこなかった経営者の場合、コストを下げることに関する知識はありません。
しかし、すぐできる方法はコストを下げることです。
・仕入れコストを見直す
・無駄と思われる経費を削減する
・社員の数を減らす
などが挙げられます。
売り上げの増加を目指すためには時間がかかるため、売り上げ増加を目指しつつコストを削減して今すぐに使わなければならないお金を減らすことで、将来的により大きな黒字化が目指せるでしょう。
資金が潤沢になるよう、黒字化を目指しましょう。
収益が見込めない資産を売却する
投資をしていて収益が出ていればよいのですが、持っていても持っていなくても同じような収益が見込めない不動産・株式などは売却してしまいましょう。
売却した分のお金は手元に残るため、ほかの支払いに充てられます。
そのうち大きな収益が出るはず…と思ってしまいがちですが、実はそういったケースはあまりありません。
思い切って売却してください。
未払いの回収をする
掛売りをしたのに支払いがない、未払い状態の顧客に対して、回収を働きかけましょう。
未払いの回収があってもなかなか催促できずにいる会社は多いはずです。
いつ払えるのかと連絡を入れ、できれば期日までの支払いを約束します。
もしそれでも入金がない場合は、訴訟なども考えなければなりません。
外注への支払期間を延ばす
入金は2か月後、でも外注へは1か月後に支払わなければならない…という問題は資金繰りの際に頭を悩ませる問題です。
そこでおすすめしたいのは、支払期間を延ばすという方法です。
入ってきたお金を支払うだけでよくなるため、資金繰りがしやすいでしょう。
もちろんすでに契約をしている外注先に関しては説明をする必要があるものの、最も簡単に資金管理ができる方法です。
返済優先順位を考える
資金不足が続いていると、手元にあるお金より支払わなければならない、返済しなければならないお金のほうが多くなってしまった場合、優先順位を考える必要があります。
では優先順位を見ていきましょう。
手形の支払いは最優先
最も優先して支払わなくてはならないのが、手形です。
支払いが滞ってしまうと手形は不渡りになってしまいますが、その後6か月以内に再度不渡りを出してしまった場合、銀行取引の停止処分が発生し、倒産してしまいます。
手形の不渡りは最も倒産のリスクを高めるため、何が何でも滞ってはならないのです。
もし、不足してしまいそうであれば、長期の分割にしてもらうなど、取引先にお願いしましょう。
社員へ支払う給与も大切
毎月支払われるはずの給与が支払われなかったとき、一生懸命働いてきた社員がどう思うかを考えてみてください。
生活のため、社員も給与が支払われないと困ります。
給与を支払ってくれない=信用できない会社とみなして、社員が続々と離れて行ってしまう可能性もあるでしょう。
社員がいなくなってしまえば、会社の再生もどんどん難しくなってしまいます。
社員へ給与を支払うことは優先順位が高いのです。
それでも、もしもお金が足りなくて支払えないというときは、給与の一部分だけを少し待ってもらうようにお願いしてみましょう。
その際も未払いは最大で30%までとして、社員にあまり負担をかけないように気を付けてください。
もちろんお金をすぐにでも作って、支払っていない給与分を支払いましょう。
仕入れた材料費も信用のために重要
仕入れ先に対して支払う材料費も、支払う優先順位としては高いです。
全額の支払いが難しいと分かったときは、早めに連絡を入れます。
全額は支払えなくても、ひとまず50%だけ支払い、後ですぐに支払うと伝えるだけでも、仕入れ先は安心するでしょう。
ただし、規模が小さい仕入れ先は材料費が支払われなかった場合に倒産してしまう恐れがあります。
そうならないように配慮し、お金を集めたらすぐに支払いましょう。
急に支払いが滞った会社は信用できない会社として見られ、会社が回復してからまた仕入れをしようと思っても断られてしまうかもしれません。
そうなると新たな仕入れ先を探さなくてはならず、せっかく回復したのにまた倒産危機に陥ってしまいます。
必ず連絡を入れて事情を話すこと、そして支払えるようになったらすぐにでも支払いを行うことで信用してもらえる状態を維持しましょう。
資金繰りがうまくいかなくなる前に
資金繰りに頭を悩ませてしまう状態になっているということは、かなりピンチな状態です。
経営がうまくいっていれば発生することがない問題ですから、資金繰りがうまくいかなくなる前に対策をすることが望まれます。
資金繰り表で現状を把握しよう
資金繰り表とは、資金の収支を表している表です。
利益の計算は発生主義で管理し、お金の出入りだけを計算します。
会社のお金はどのように回っているのか、これから資金繰りは苦しくなるのか楽になるのか、といった会社のお金全体のことがわかるでしょう。
資金繰り表を見ると資金の動きが一目瞭然なので資金繰りがピンチになる前に対策も考えられます。
また資金不足が起きないように調達予定表の役割もしているため、資金繰りの現状を知るために活用しましょう。
専門家に相談しよう
資金繰りをうまくするためには、必要な知識もたくさんあります。
しかし、全部自分で勉強して行っていると、本業がおろそかになってしまいかねません。
そこで頼れるのが専門家です。
事業のお金について学び、知識をつけている専門家であれば、資金繰りがうまくいくように対策を考え、アドバイスをくれるでしょう。
1人で考えているよりもよい対策が見つかるため、資金繰りのことで何か相談したいことがあれば、専門家を頼りましょう。
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