資金繰りの改善は、悪循環を断ち切ることが重要

資金繰りの改善は、悪循環を断ち切ることが重要

資金繰りの「資金」とは現金預金のこと

企業において、資金繰りが悪化すれば経営状況に影響を与えます。

資金繰りの「資金」とは、現金預金のことです。
現金預金とは、いつでも自由に使える資金を示します。

たとえば普通預金・当座預金・担保以外の定期預金などの預金、手元にある現金、手元現金に値する小切手などです。

資金の流れにはズレが生じている

資金の流れのズレと黒字倒産の例
1.会社に十分な資金があっても資金繰りが悪くなる理由は、商品の仕入れ時期と支払い時期、商品の売り上げ時期と資金回収時期など、資金の流れにズレが生じるからです。

商品仕入債務発生から資金決算までの期間を「仕入債務支払サイト」、商品売上債権発生から資金回収までの期間を「売上債権回収サイト」と呼びます。

資金繰りが悪化する原因は、売上債権回収サイトに対し仕入債務支払いサイトが短くなるためです。

2.営業利益を生まず、赤字だと赤字補填資金が必要となり、資金ショート要因となります。

3.設備投資は、運転資金で行うと、資金が長期間寝てしまい、資金ショートの要因となります。

4.売掛金回収が出来ないとその不良債権分だけ資金ショートします。

5.過剰在庫になると過剰分だけ資金ショートします。

資金繰りが上手くいかないと黒字倒産するリスクがある

経理上は黒字経営であっても、資金繰りが上手くいかなければ黒字倒産する可能性があります。
黒字倒産とは、資金が足りないのが原因です。

トータルで利益が出ていても倒産するリスクがあるため、資金繰りがどれだけ大切なのかわかるでしょう。

たとえば100万円で仕入れたものが200万円で売れて、経費が40万円かかれば60万円の利益が出ます。

しかし、利益として確定できるのは、販売先から売上代金が入金されたあとです。

経費は先に支払いが必要となり、仕入れ代金や経費は手持ち資金でやりくりしなければなりません。

たとえ60万円の利益が見込める場合でも、仕入れと経費の140万円の資金が売掛金回収前になければ黒字倒産もあり得るということです。

資金繰り改善のため大切なのは意識改善と分析

会社が黒字倒産しないためには、資金繰りを改善することが重要です。

改善のためには、自己資金調達の意識改善と、赤字経営になる原因を追究する必要があります。

資金不足があるなら金融機関調達だけに頼らず改善する意識が必要

最初にやらなければならないのが、金融機関からの資金調達だけに頼らない考え方に変えることです。

資金が不足しても金融機関から借りれば問題ないと考えている方もいるかもしれませんが、万が一借入れできなければ資金不足が発生します。

資金が足りなければ最悪の場合、会社は倒産してしまうでしょう。
つまり、資金調達は借入れだけでなく、種類を変えて調達できるようにしてください

同じように資金調達といっても、いくつか種類があります。

融資は公的融資制度や金融機関、事業者ローンからの借入れがあります。

金融機関以外からは、親戚・知人からの出資、ベンチャーキャピタルからの出資も考慮してみましょう。

自治体によっては助成金や補助金が下りることもあります。

最近、注目される資金調達先としては、クラウドファンディングが挙げられます。
魅力的な商品に対し不特定多数から資金を調達する方法で、2011年から広まりました。

赤字経営や過剰な在庫など資金繰りの悪化となる原因を追究する

資金繰りが悪化する原因はどこかにあるはずで、悪化させている原因を追究しなければなりません。

安易に金融機関の融資を考えるのではなく、根本的な原因を見つけて改善していきましょう

たとえば自己資金が不足し赤字経営である、売上債権回収サイトや仕入債務支払サイトの問題、過剰な在庫を抱えている問題などです。

ほかにも得意先が倒産するケースや、得意先の売掛金貸し倒れも注意しなければなりません。

資金繰りの悪化を改善するための10の対策

会社の経営状況は、経理や財務担当者はもちろんのこと、経営者も把握しなければなりません。

資金繰りが悪化する状況があるなら、次に紹介する10の改善策を確認しておきましょう。

1.利益を高める工夫をする

会社の利益率を高めることは、資金繰り改善につながります。

仕入価格を安くしたり、販売コストを下げたりするのも有効です。
固定費を見直せば、経費の削減ができます。

思い切って人事を変える、商品戦略を変更する方法もよいでしょう。
社内で赤字事業があれば、撤廃する思い切りも必要です。

2.売上債権回収サイトを短くする

各サイトの長さの決め方
いつまでも売上金が回収できなければ、売掛金や受取手形ばかりが増えていきます。

得意先があると関係性を良好に保つため、相手方がいう売掛金決算期日や受取手形サイトの延長を受け入れざるを得ないことがあります。

しかし売上金が回収されないことには資金も足りなくなってしまうため、一定のルールを設けることが大切です。

1度や2度の対応は大目に見ても、毎回売上債権回収サイトが業界平均より長くなってしまうのは避けましょう。

また、営業マンに回収時期の判断を任せるのも資金繰り悪化の原因のひとつです。

営業マンは売上を上げることに高い意識を持っていますが、回収に関しては疎いケースがあります。

営業マンに判断を任せる必要があるときは、社内でルールを一定にして指導しておくようにしてください。

3.仕入債務支払サイトを延長する

商品を仕入れた際に発生する売掛金や支払手形は、長く設定することで資金繰りの改善につながります。

改善が必要な目安は、業界平均より支払いサイトが短い場合です。

改善が必要であれば、現金払いから手形払いに変えてもらう方法や、手形サイトを延長してもらいましょう。

ただし、支払いサイトを短くすると割引してもらえる場合や、資金の流動性を高めて売り上げアップが見込める場合は、短くしないほうがいいでしょう。

また、仕入債務支払いサイトの延長は、仕入れた商品が何日で販売できるのかで考えます。
販売期間が長くなる商品なら支払いサイトは長くしなければなりません。

締め日を意識した仕入のみにするのも、資金繰りを改善する対策のひとつです。

4.過剰な在庫を抱えない

在庫を多く持っているほど営業がしやすいため、在庫が過剰になってしまうことがあります。

しかし、多数の在庫を抱えていれば、それだけ資金にできない在庫が発生し、資金繰りが悪化します。

とくに倉庫に眠っている不良在庫は、そのまま寝かせておけば保管の経費がかかり、保管スペースも狭くなって悪循環です。

放置すれば次第に在庫の割合が高くなるため、早めに対処するようにしましょう。
たとえ在庫の処分で損が出てしまっても、流動性を高めたほうがいい場合もあります。

5.得意先の倒産リスクを把握する

資金繰りを悪化させる要因のひとつが、得意先の倒産です。

取引先が倒産すれば資金を回収できません。

日ごろから情報収集を欠かせないようにし、得意先が倒産シグナルを出すのを見逃さないようにしてください。

取引先が手形サイトの延長を申し出てくる場合や、現金入金が遅れる場合は注意が必要です。

得意先の経営状況をすべて把握することは難しいため、幅広い取引先と情報交換をするようにします。

万が一倒産シグナルが出ている場合は、早めに取引先を変える対策が必要です。

また、倒産しても資金ショート対策として、「倒産防止共済制度」がありますから、不測の事態に対するリスクヘッジとして加入しておくべきです。

積立分の10倍までの緊急融資を得られます。

6.余裕あるキャッシュフロー内で投資を行う

会社の利益を高めるためには投資が欠かせません。

しかし、投資の割合が高くなってしまえば、資金繰りが悪くなってしまうでしょう。

理想的な投資とは、余裕あるキャッシュフロー内で行うことです。

投資のために資金を使用すれば、結果的に借入金が増えて利息や元金返済で資金が減ってしまいます。

投資が必要な際には必要な部分のみに留めるようにし、投資により利益をもたらすかよく検討するようにしましょう。

7.金融機関に金利や返済期間の交渉をする

会社に借入金がある場合は、金融機関に金利交渉しましょう

金利が少しでも下がれば、返済額が減り資金繰りにもよい影響を与えます。

借入れから期間が経っている場合は、借り換えも検討しましょう。
低金利時代では、金利が1%以上下がることもあります。

また資金繰りに困ったときは、金融機関に返済の猶予を与えてもらうよう交渉する方法もあります。

交渉次第では利息のみを支払うだけでよく、支払い期限を延ばしてもらえるでしょう。

ただし、安易に借入れを増やすのは避けたいため、経費や設備投資を減らし、金融機関からの返済はできるだけ短くする対策も必要です。

8.役員の資金投入で資金繰りを防ぐ

役員は会社の倒産リスクを防ぐ責任があります。

資金繰りが悪く倒産リスクが発生しているときは、役員自らが資金を投入できるようにしておきましょう。

役員の資金は、増資や会社への貸付金として使用できます。

また、少人数私募債の発行も、資金繰り改善としておすすめです。

少人数私募債は、発行人数50人未満で可能となり、担保や保証人が不要で、金利や償還期間は自社で決められるメリットがあります。

9.アウトソーシングを利用して経費を減らす

社内の人員にコストがかかっている場合は、アウトソーシングで経費削減できないかも考慮してみましょう。

アウトソーシングが利用しやすいのは、経営に直接左右しない部門です。
給与計算・会計・決算などは、自社でもアウトソーシングでもそれほど違いが出ません。

また、アウトソーシングは、売上と同じ時期の支払いサイトにできるため、ズレを減らせるメリットがあります。

10.不要な資産を売却して資金を作る

会社が大きくなってくれば設備投資もしているため、不要な資産がないか考えてみましょう。

資産は保有すればコストがかかりますが、売却すれば資金にできます
利益が出ていない店舗があれば、経営を縮小する思い切りも必要です。

洲山【代表:喜多洲山】プロフィールページはこちら

負債30億円で破綻寸前からの事業再生・復活を経営者として体験したので、社長の目線で物事を見て判断できる強みが持ち味です。
したがって、的確なアドバイスが出来ると自負しています。

<主な著書>
幻冬舎刊「あなたの会社をお救いします-事業再生総合病院」
出版文化社刊「事業再生家―会社が蘇った奇跡の物語」
PHP刊共著「ハイリスク金融商品に騙されるな」
ダイヤモンド社刊共著「社長最後の大仕事。借金があっても事業承継」

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