会社経営をしていると、業績が赤字になることも珍しくありません。
赤字になったからといってすぐに会社が倒産するわけではないので、落ち着いて策を練りましょう。
資金繰りを上手く行えば、黒字へとV字回復するのも夢ではありません。
本記事で赤字から黒字へ回復するための方法、さらに黒字転換に関する基礎知識や黒字にV字回復した過去の事例を紹介します。
- 赤字経営からV字回復はできるのか
- 赤字経営を黒字化するための基礎知識
- 1.資金と資産の違い
- 2.利益をあげている状態でも資金が不足することもある
- 3.黒字回復しても安心してはいけない
- 黒字転換において重要な3つの指標
- 1.財務収支
- 2.営業収支
- 3.経常収支
- 赤字経営を黒字化するための3ステップ
- 1.現在の状況を分析する
- 2.コストを削減する
- 3.売上をアップさせる
- 実際にあったV字回復例
- ゴールを明確にしたうえで黒字転換の施策を考えよう
赤字経営からV字回復はできるのか
赤字経営になったらすぐに倒産してしまうとは限りません。
赤字になっても会社にある程度資金が残っていれば、存続させられます。
また資金繰りを改めたり新たな施策を講じたりすることで、赤字から黒字へとV字回復させることも十分可能です。
実際に誰もが知る大手企業の中には、経営不振により赤字収益が続いている時期がありながらも、現在では見事なV字回復をした会社も多くあります。
赤字経営を黒字化するための基礎知識
赤字経営を黒字化するために知っておくべき基礎知識を3つ紹介します。
1.資金と資産の違い
赤字経営の状態から黒字転換させるためには、会社の収支の見直しを行う必要があります。
このとき資金や資産といったワードが頻繁に用いられますが、この2つのワードの意味の違いを正確に説明できる人は、実は意外と少ないです。
これらのワードの意味をはき違えていると、認識の違いにより資金繰りをさらに悪化させてしまう恐れがあるので、必ず押さえておきましょう。
資金とは、会社がすぐに使用できる財産全般を指す言葉です。
たとえば、現金や普通預金・定期預金といったものが資金に該当します。
黒字転換に向けた施策を行う際は、この資金を主に活用します。
よって現在資金をどれくらい保有しているかということは、経営を立て直す際にとても重要な要素になります。
一方、資産は自由に取り出したり使用することが難しい財産を指します。
たとえるのならば不動産や工場設備といったものです。
これらの財産は、当然いくらかの価値があり、売却すればお金を捻出できます。
しかし、すぐに売却できるとは限らないので、現金のように取引先との決済に用いるのは困難です。
このように資産は資金に比べ、扱いにくい財産です。
2.利益をあげている状態でも資金が不足することもある
利益をあげていれば会社経営は上手くいっていると考えがちですが、実際にはそう単純な話ではありません。
経理処理のうえでは利益があがっていても、手元の資金が不足している可能性があるからです。
たとえば、取引先企業に翌月払い、つまり売掛で商品を販売した場合を考えてみましょう。
このとき商品を受け渡す日と代金の支払い日にずれが生じます。
経理処理上では売上がたったタイミングで計上され、プラスの収益として記載されるのです。
しかし、実際にはまだ代金を受け取っていないので、手元にはお金はありません。
このように利益があがっていても、実際の資金は不足しているというケースも存在します。
3.黒字回復しても安心してはいけない
赤字が続いている状態では、いずれ資金が底をつきて会社が倒産してしまうので、早急に黒字転換を目指した資金繰りに切り替える必要があります。
しかし、黒字収支になったからといって、安心してはいけません。
なぜなら、黒字の状態でも、倒産する可能性はゼロではないからです。
上述したように、経理上の資金と実際に手元にある資金は必ずしも一致するというわけではありません。
そのため見かけ上は上手く経営できていると思っていても、手元に資金が無くて取引先に代金が払えないといったことも起こります。
また、手元の資金不足により従業員の給料が支払えない自体も起こり得るでしょう。
このように、黒字に転じたからといって油断は禁物です。
会社の経営状況をチェックするときは、単純に収支だけを見るのではなくお金の流れにも着目して、滞りの無い円滑な資金の流れが形成されているかも確認しましょう。
黒字転換において重要な3つの指標
会社の経営状況は経理書類を確認することで、ある程度調べられます。
しかし、経理書類は煩雑で、どの項目をチェックすればよいのか判断が難しいです。
黒字転換を目指すのであれば、最低でも「財務収支」「営業収支」「経常収支」の3つの項目はチェックしましょう。
これら3つの項目は、会社の経営状況を判断する際にとても重要な指標です。この3つの項目の内容について説明します。
1.財務収支
財務収支は金融機関からの借り入れ額の収支を表す指標です。
お金を借り入れた時はプラス、借り入れ金を返済した時はマイナスと記入されます。
借り入れ額が多くなると毎月の返済が増えてキャッシュフローが悪化するので、借り入れ額はなるべく少ない方がよいです。
2.営業収支
営業収支とは、本業とする業務でいくらの利益を生み出しているのかを表す指標です。
営業収支は会社の経営状況を反映する重要な指標なので、黒字転換を望むのであれば必ずチェックすべき項目でしょう。
本業の収支から利益を算出するには、はじめに売上総利益を求めます。
売上総利益は商品を販売することで得た売上高から仕入れ代、いわゆる売上原価を差し引いたものです。
この売上総利益から販売費及び一般管理費を差し引けば、本業の利益を算出できます。
なお販売費及び一般管理費とは、商品を販売するうえで必要な売上原価以外の経費のことです。
黒字転換をするには、この営業収支の利益を安定化させること重要となります。
営業収支の利益が一時的に改善しただけでは経営が上手くいっているとはいえないので、注意してください。
3.経常収支
経常収支は財務活動などに関する収支を表す指標です。
一般に金融機関への返済額が増えると、経常収支は小さくなります。
営業収支が好調でも、この経常収支の状態が悪いと会社の経営状況はあまりよいとは評価されません。
よって黒字へのV字回復を目指すのであれば、営業収支だけではなく経常収支にも目通しすべきです。
税金の支払いや設備投資に関しては、経常外収支という形でまとめられます。
設備投資では多額の資金を投下するので、大きな負の値となることもあるでしょう。こちらも併せて確認してください。
赤字経営を黒字化するための3ステップ
以下では、赤字経営を黒字化させる具体的な方法を3つのステップで解説します。
1.現在の状況を分析する
闇雲に策を講じても黒字化は思うようにいきません。
まず第一にすべきは現状の分析です。
現在の経営状況はどうなっているのか、問題点はどこにあるのかを調べることで、最適な改善策を導き出すことができ効率的な業績の向上が期待できます。
現在の状況の分析には、収支分岐点売上が役立ちます。
収支分岐点売上とは、収益と支出のバランスを表す指標です。
収支分岐点売上を確認することで、どれくらい収益を増加、もしくは支出を削減すれば黒字になるのかが一目瞭然になります。
収支分岐点売上は、固定費用と必要利益の和を限界利益率で割ることで算出できます。
ゆえに収支分岐点売上の算出には、固定費用・必要利益・限界利益率の3つが必要です。
限界利益率とは、限界利益を売上高で割った値のことです。
限界利益は売上高から変動費を差し引いた値のことを指します。いわゆる粗利益と意味は同じです。
変動費には売上に比例する支出が該当します。
たとえば商品の仕入れ値は変動費です。
必要利益は赤字にならないために必要とする最低限の利益です。
たとえば、金融機関からお金を借り入れている場合、毎月いくらか返済しなければならないので、最低限その返済額の分の利益を上げる必要があります。
この継続的に返済するために必要な利益分が、必要利益です。
また、税金も必ず支払う必要のあるものなので、必要利益に含めます。
固定費用とは、売上に依存せずにかかる一定のコストのことです。
家賃の支払いや従業員の給料がこれにあたります。
これらの値を用いて収支分岐点売上を算出すると、黒字にするために削減すべき支出金額や目標の売上金額などが設定できます。
そうして黒字転換を実現するためのゴールが明確になり、経営改善に向けた議論も進めやすくなるでしょう。
2.コストを削減する
黒字転換を行う方法のひとつが、コストの削減です。
コストを下げれば売上を向上させずとも赤字を脱却できるので、無駄な部分はどんどん削減していくべきでしょう。
コストを削減する際は、コストの種類を細かく分類するのがおすすめです。
たとえば製造・販売など会社の部門ごとにコストを分け、さらに各部門ごとのコストを営業費・広告費といった具合に細分化します。
このように細分化したら、その業務は本当に必要なのか、新たなシステムを導入することで出費を減らせないか、業務をまとめて効率化できないかといった点をチェックします。
それによって業務の無駄が浮き彫りになるのです。
3.売上をアップさせる
単純に売上をアップさせれば、赤字から黒字へと回復させられます。
売上アップを目指す場合は、「販路を拡大する」「取引先当たりの取引量を増やす」の2つを意識しましょう。
販路を拡大する手段はいくつかありますが、最も代表的な方法が営業活動を強化することです。
営業の人員を増やしたり、Webや電話を活用したりなど、さまざまな施策を講じてみましょう。
紹介報酬を設定するなどの仕組みづくりも効果的です。
また、取引先当たりの取引量、いわゆる客単価を向上させるのも売上アップに繋がります。
客単価をアップさせるには商品PRを強化したり、他の商品も紹介してみたりしましょう。
実際にあったV字回復例
どの業界でも業績が悪化した危機的状況からV字回復に転じた事例がいくつも存在します。
たとえばある飲食チェーン店は過酷な労働環境であることが問題視されて、多額の損失を出した年がありましたが、2年ほどで見事なV字回復を見せました。
この飲食チェーン店の業績が回復した背景には、商品価格の見直しや労働環境の改善、メニューの増加といった施策が関係しています。
業績不審であった当時は低価格で商品を販売していましたが、競合会社の価格と比較検討して値上げに踏み切っています。
また問題視されていた労働環境も改善して、世間のイメージを向上させることに尽力しました。
その結果、客の入りと客単価が向上して、赤字を脱却しています。
ゴールを明確にしたうえで黒字転換の施策を考えよう
赤字から黒字への回復は闇雲にコストを下げたり、売上向上を目指すだけではなかなか実現できません。
大切なことは、目標・ゴールを明確にすることです。
いくらコストを下げればよいのか、どのくらい売上を向上させれば黒字に転じるのかを、具体的な数値として算出しましょう。
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