石井博コンサルタントコラム

製造業の皆様、予算を作成していますか?を考える

2010年5月26日号では、作業日報(作業報告書)を活用して
部品別のEBITDA(償却前営業利益)管理ができるようになり、
新規で引き合いを頂戴した時には、製造原価が把握できていることから、
営業マンもどこまでなら売値を下げることができるかを把握して
値決め交渉ができる。

非常に威力を発揮する旨、ご報告させていただきました。

お読みになっていない方は、是非、ご一読いただければ幸いです。

今回のテーマも作業日報(作業報告書)をさらに活用し、
経営改善ができた小職の体験談を皆様にご報告させていただきます。

いきなり本題に入りますが、「予算を作成していますか?」

「うちは、100%受注生産だから、
 得意先からどのくらい注文をもらえるか、まったくわからない。」とか、
「得意先別の売上高だけは予算組んでるよ。」とか、
「来月の受注状況もわからないのに予算なんか組んでも意味がない。」等の
答えが大半であると思います。

しかし、本当にそれでよいのでしょうか。

例えば、
「ここ4、5年賞与も払っていないし、ちょっとは皆に払わなければまずいな。
 このぐらいなら払えるだろう。」と
思いながら賞与を支払っているのが現実ではないでしょうか。

vol.128(2010年5月26日号)にて登場した企業も同様に
金融機関から短期借入をして賞与を支払っていました。

なぜ、予算を作成する必要があるのでしょうか、
『年間これだけの賞与を皆さんに支払いたい』、
『少しばかりの昇給は考えないと』、
『機械が古くなってきたから修繕しなければならない』、
『設備投資も考えなければならない』、
とやりたいことが沢山あるはずです。

そのやりたいことを全部やることはムリでも、
優先順位を付けて実行するためにも予算作成が必要であると思います。

小職の場合もやりたいことが沢山ありました。

株主が某金融機関系のファンドであったことから、
予算については非常にシビアで予算必達、未達成はありえない、
という株主であったことから、予算作成(算出根拠)については
時間を掛けて丁寧に作成しました。

幸運にも同社を取り巻く外部環境がその時は良かったこともあり、
小職が同社にて事業再生に携わった4年間は毎期、
予算をクリアーしておりました。

では、予算と作業日報(作業報告書)が
どのように結び付けたかをご報告します。

作業日報(作業報告書)を活用することで
部品別のEBITDA管理ができるようになったことは前述しましたが、
部品別に1部品当りの材料費はいくら、1部品当りの購入部品費はいくら、
1部品当りの外注費はいくら、1部品当りの運送費はいくら、
1部品当りの梱包費はいくら、等をエクセルで計表化していることにより、
1部品当りの限界利益が把握できます。

限界利益(げんかいりえき、marginal profit)とは、
管理会計の概念の一つ。
売上が1単位増えることで増える利益のこと。

経済学で用いられる『限界』という言葉は『一単位増やしたときの』という意味である。

日常の言葉の意味からかけ離れているため注意されたい。

限界利益には固定費が含まれる。

限界利益=売上高-変動費

限界利益=固定費+利益

また、固定費の回収に貢献することから、
貢献利益(こうけんりえき、contribution margin)とも呼ばれる。

ただし、会計学上、商品別の限界利益から個々の商品販売に
直接関与した固定費を引いたものを貢献利益と呼ぶことがある。

(出典:wikipedia ウィキペディア)

後は、固定費の算出です。

固定費についてもアバウトにこのぐらいの金額と決めつけるのではなく、
丁寧に算出することをお勧めします。

固定費の中で割合が大きいものに人件費がありますが、
人件費の算出については、個人別(役員含む)に標準報酬月額はいくら、
各種手当が存在する場合はいくら、等を丁寧に計表化していきます。

また、リース契約、割賦契約をしている場合も、
リース物件ごとに支払い金額、再リース金額、
割賦金額を丁寧に算出していきます。

支払手数料、租税公課等につても同様です。

要は、支払うべき金額が明確な勘定科目については
丁寧に算出することをお勧めします。

支払う金額が不明確な勘定科目については、
総勘定元帳から勘定科目ごとに月別のトレンドを考慮しながら
予想して支払い金額を確定させる。

または、試算表の売上高構成比から金額を確定させる等を実行しました。

前述した作業を丁寧に実行し、
後は、月別にP/Lに落とし込んでいけば予算は作成できると思います。

色々と予算作成の仕方はあると思いますが、
小職はこのような方法で予算を作成しました。

B/S、キャッシュフロー計算書まで作成できれば
なおさら良いとは思いますが、
現時点ではP/Lを固めることが重要ではないでしょうか。

費用面はこれで算出できましたが、
一番重要なのは、月別に得意先別に売上高を予想することです。

月別に得意先別に売上高を予想することに一番時間を割いていたと思います。

調査し過ぎということはないと思います。

売上高の多寡により利益額が上下します。

利益額の上下により、やりたいことがどこまでできるか、
ということになるからです。

小職の場合は、一次下請けメーカーであったことから、
まずは得意先の購買担当者から年間月別フォーキャスト{購買(注文)計画}を
入手することから始めました。

また、機種別に年間販売計画数もあわせてヒアリングしました。

機種ごとに当社が受注している部品は
何部品あるかもあわせて検証をしました。

また、前年、前々年のフォーキャストと
前年、前々年の受注実績の乖離を月別に検証し、
受領したフォーキャストを加工して当社が受注している部品ごとに
月別に受注予想数量を確定させました。

機種別の年間販売計画数については、
アナリストの予想、各種団体、工業会の見解等も
ネットにて検索して参考にしました。

また、既存受注部品以外に新規受注予想部品も
予算化する必要があることから、設計部隊へのヒアリングも実施しました。

あくまでも予算は予想に過ぎませんが、
この1年間でやりたいことを実現するためには予算作成は必須と思います。

折角、時間を掛けて作成した予算ですから、
机の中に丁寧にしまっておくのではなく、大いに活用しましょう。

やりたいことを実現するためにです。

小職でよろしければいつでもご支援させていただきます。

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