神崎和也コンサルタントコラム

ジーとザー、一字違いで大違い!FCビジネスに気を付けて!その弐

もうお忘れかもしれませんが、前回の続きです。

家族総出で夜も寝ないで頑張った結果、
とうとう社長は5店舗目をオープンする事が出来ました。
やっと人も育ってきて、
自らが店に入らなければならない事も少なくなってきました。
スーパーバイザーも育ってきて、日常業務は任せています。

『これで俺も一国一城の主だなぁ、結構頑張ったし、
 銀行口座には ○○○○万円あるし、ちょと息抜きしてもええやろ。』

なにしろ社長ですから、誰も止める人はいてません。

居酒屋がキャバクラになり、そしてクラブへ、、、、
カローラがクラウンになり、そしてベンツへ、、、、
ユニクロがデパートになり、そしてセレクトショップへ、、、、
SUKIYAが松屋になり、そして吉野家に、、、

最後はちょっと違いますね、、、、

自分へのご褒美をあげまくりです。

でも従業員の待遇は今まで通りです。

『利益が出たらボーナスをはずむから!』

『帳簿上は利益が出てるけど、返済が多いからキャッシュがない。』

色々な理由で従業員の待遇改善は進みません。

自分へのご褒美を経費で落とし、税金対策の名の下、
家族経費まで経費で落としていますから、利益なんて出る訳ありません。
と言うより、利益を出す気なんて全くありません。
税金を取られるのが余程嫌なのでしょう。

でも、利益を出さなければBSは良くなりませんよね。

しかし、それでも店舗が増えているうちは
銀行がお金を貸してくれるんですね。 

一流大学を出て勉強してきたはずのエリート銀行員が
1.店舗数が増えている。
2.売上も増えている。(指標は昨対しか見ていない。)

店舗毎の売上が下落傾向にある事や、粗利益率の低下、
人件費の増加なんか殆どノーチェックです。
だって保証協会があるんだもん!
売上が下がったら下がったで、
今度はセイフティーネット融資を進めて来ます。
融資審査なんて名ばかりで保証協会喰いまくりです。

そんな事も気が付かず、資金繰りが厳しくなったら銀行に相談し
新規融資で繋いできた社長ですが、遂に最後の日がやってきました。

そうです。
保証協会の枠がいっぱいになったんです。

その日を境に、銀行は一切貸してくれなくなりました。
不動産を持たない人にはプロパーでなんて貸してくれません。

本部への支払いは、月末締めの翌10日払いの契約です。
従業員の給与は月末締めの翌15日払いにしてあります。

本来なら、銀行から借りなくても最低40日分の現金がある筈ですが、
月末の銀行約定弁済を決済するのがギリギリになってきました。

月末の返済を終えたら口座残高は数万円。
これから10日までの売上で本部支払い分を溜めなければなりません。

本部への支払いは、原材料+ロイヤリティ+販促費その他で
売上の約40%になります。

これはヤバい! 

あっそうだ! 社長はカレンダーを確認しました。

ラッキー!!!!!

来月は2日が日曜だ! 10日までに週末が2回ある!!!!

あとは土日に雨が降らない事を祈るのみ、、、

……10日の支払いは何とか乗り切り、ほっとしたのもつかの間、
新たな災難が襲ってきました。

っていうか最初から決まっていたんですが、、

15日の給料日はな、なんと土曜日だったのです。

と言う事は、普通であれば金曜日に振り込まなくてはなりません。

さぁどうしよう、、、、、、

自分と嫁さんの役員給与を除いたとしても、従業員給与は売上の約25%

とても5日間の売上では足りません。最低一週間分の売上が必要です。

さて、どうする?

答えは色々ありますが殆どの社長が取る道はカードローンによる調達です。

J○B、VI○A、○MEX、ちょっと気取ったDI○○ERS
銀色や金色、時には自慢の黒色カードを駆使して、資金調達です。

簡単に出るんです。 お札が、機械から、、、、、

お金を貸して下さいと頭を下げなくても、機械に『5,0,0,0,0,0』って
打つだけで50人の福澤諭吉さんが笑顔をやってくるんですよ!

もう止められません。

金色のカードで呼び出した50人の諭吉さんに聞けば、
翌月の10日には絶対に帰らなければならないとの事。

一日でも帰りが遅れれば、もう二度と来れないらしいんです。

結構なお土産も持たせなければなりません。

仕方ないから、その前日に銀色のカードで60人の諭吉さんに
来て貰わなければならなくなりました。

でも大丈夫!

一旦、お帰りになった諭吉さんは、次の日にはまた来てくれるんです。

そんなこんなで、毎月10日前後は非常に忙しくなりました。

今じゃ10枚のクレジットカード、ローンカードを操っています。

10年前に香港で買ったヴィトンのエピの長財布はパンパンです。

角がすりきれ色が剥げ、ちょっと貧乏くさいのはご愛嬌。

後は銀行借り入れのリスケをするしかありません。

そして、無事にリスケも終了し、一年間は利払いのみとなりました。

資金繰りもずいぶん改善してきました、、、
いやそのはずだったんですが、

カードローンで借りに借りたり、12件 その残高約1,300万円
平均利率は13% 毎月利息だけでも約15万円になっていました。

と、此処までは何もフランチャイズビジネスでなくてもよくある話。

一般的な資金繰りの話であり、なにも珍しい事ではありません。

FCビジネスの本当の怖さはこれからです。

ジーがザーに対する支払いを遅延する事は絶対に許されておりません。

1日でも遅れた日には、
直ぐに本部からSVが飛んできて厳しい尋問が始まります。

例え、会社が儲かっていなくても、
社長の役員報酬をゼロにしていたとしても、
『FC契約』があるから絶対に払わされます。

もし、支払えなかったら、、、、、、、

此処から先が、通常の商取引とFCビジネスの決定的な違いです。

通常の商取引の場合、買い手側が圧倒的に有利です。

交渉により、支払期日の延期や、分割払を相談し、
最悪の場合でも取引停止となるだけで、他社からの調達も可能です。

しかし、FCビジネスの場合、
他社からの仕入れ自体が不可能な場合が殆んどですので、
事業の継続自体がザーに命運を握られている状態です。

『このままでは出荷停止に踏み切らざるを得ません。』

『商品(原材料)が入らなくなれば営業が出来ないので、
 なんとかなんとかそれだけは何とかしてください。』

『でも契約ですからね。』

『当初契約する時には営業利益10%って言ってたじゃないですか!』

『あくまでもそれはモデルケースであり、
 なんら保証するものではないって契約書にちゃんと書いてありますよ。』

それまで親切だった(親切に見えた)本部の人間の話の中に
やたら『契約』という単語が出てくるようになれば、もう末期的症状です。

本部側は既にあなたの会社にロックオンです。

正確にはあなたの店舗に、ですが、、、、

そして、ついにその日が具体的になってきました。

来月の支払いの目途が全くたちません。

本部は契約時に保証金を取っているので、
取りっぱぐれは基本的にありません。

せめて、最後くらいは綺麗に終わらせたいと思った社長は
店舗を買い取ってもらえるよう本部と交渉しました。

内装に3,000万円、機器に1,500万円、毎月1,200万円の売り上げがあるし、
本部が直営でやったら充分利益の出る店舗だから、
営業権付きで買い取ってもらえるだろう。
せめて残存簿価で引き取ってくれたら従業員の給料と、
当面の生活費位は何とかなる。

(本部は)大きい会社やし、そんなに無茶はせえへんやろ。

全ての財産を失い、無一文になるけど
自分でまいた種やからも一回頑張ってやりなおそ!
と甘い気持ちで臨んだ社長に、、、、、

無茶をするんです。本部は。大きければ大きいほど。

『本部が引き取るって、そんな事契約書のどこにも書いてないですよ。』

『契約を解除するのは社長の自由ですけど、6か月前告知になりますから
 今からだと、9月末になりますね。契約書に書いてありますよ。』

『営業権って何ですか。それって食べられるんですか?美味しいんですか?
 契約書に書いてましたっけ。』

『このままもし営業を止めるのなら、店舗の原状復帰はどうされるんですか?
 結構お金が掛りますよ。スケルトンにして出てって下さいね。
 契約書通りにね。』

もう、やられっぱなしです。言われまくり。

ほんの数年前までただのサラリーマンだった社長は
こんな修羅場を踏んだ事はないもんだから、押されまくっています。

本部で散々脅され、御先真っ暗。
自殺さえ考えている社長に数日後、電話あります。

『お久しぶりです。本部の○○です。』

FCビジネスを始めたとき、最初の担当SVだった○○さんからでした。

いまは出世して部長になっているみたいです。

『ちょっと聞きましたけど、社長大変らしいですね。大丈夫ですか?』

あぁ、本部の中でもまだ私の事を考えてくれる人がいてたんだ。

一縷の光明が見えてきました。これで何とかなるかも、、、

これからが本当の本部のクロージングの始まりだったのでした。

合掌

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