宮内正一コンサルタントコラム

預金解約のススメ

弊社にご相談に来られるクライアント様には、当該会社の現状を把握する為、
決算書をお持ちいただくようにお願いしています。

すると、驚くような内容に出会う事があります。

私「社長、借入が5億円あるのは判りますが、
  定期性の預金も2億円ありますね・・・」

特に業歴の長い会社にありがちなのですが、借入額の20%~40%にもなる
定期預金や定期積金をコツコツ貯め込んでいる社長がいらっしゃいます。

私からすれば、「この預金を解約して返済に充てるか、
資金繰りに充てればいいのに・・・」と思うのですが、
これが社長にとっては中々決断できないようです。

社長からすれば、預金を解約すると「今後銀行は貸してくれなくなる」
という恐怖心で一杯なのでしょう。

確かに右肩上がりの成長期においては、銀行から融資を引き出し、
利益は預金としてプールし、再度融資を申し込むという繰り返しは、
銀行付き合いとしては有効な手法であったと思います。

しかしながら、窮境状態となった社長の多くは、
この考え方を転換する必要があります。

つまり、「銀行から、今後融資を受けずに事業を続ける」
という方針の大転換です。

「銀行から融資を受けなければ資金が回らない・・・」という社長には、
「融資受けず、リスケを申し出る」事をセットでお勧めします。

「銀行から今後融資を受けない」という決心さえつけば、
銀行に余計な定期預金や定期積金をおいている意味はありません。

仮に資金繰りに支障があるなら、
即刻預金を解約して資金繰りに充てるべきでしょう。

しかし、預金解約を決意しても、
二つの問題で、銀行は中々応じないのが現状です。

一つ目は、銀行からすれば
「この預金は見合い(=担保見合い)預金だ」という考えです。

「社長とは、預金取引も含め総合的な観点から融資取引をしてきた」
「見合い預金を解約する事は、
 今後社長の融資ニーズに応えられなくなりますよ」
と銀行は言うでしょう。

しかし、「今後借りない」という決意があれば、何の問題もありません。

「見合い預金は担保預金では無い」「融資条件でもない」事を堂々と主張し、
預金を解約して資金繰りに回しましょう。
特段の事情が無い限り「預金が解約出来ない」という事はあり得ません。

二つ目は担保預金の場合です。

担保預金を解約して資金繰りに回す事は、極めて困難です。
銀行からすれば、「新規融資と事実上同じ」ですし、
与信行為として本部決裁が必要になるからです。

この場合の対処方法は「預金相殺」です。

「預金相殺」で大幅に「実効金利」が下がるのです。

※実効金利(又は実質金利)
銀行は融資金利決定の際、表面金利だけでなく、
融資先との預金取引を含めて金利を決定している。
担保預金をより多額にする事で、
銀行は表面金利以上の収益を得る事が出来る。

冒頭のクライアントの事例で考えます。

融資5億金利3%とすれば、年間支払金利は1,500万円です。

ここから預金金利を差し引いた金額が、実際の負担金利額になりますが、
昨今の預金は事実上ゼロ金利ですので、ここでは省略します。

これを実効金利で考えますと。

年間支払利息15百万÷(融資5億円-預金2億円=3億円) = 5%

実効金利は5%になります。

社長は銀行から3%の金利で借りているつもりが、実は5%という高利なのです。

しかも、この取引を預金相殺すれば、次のようになります。

(融資5億円-預金2億円)×金利3%=年間支払金利900万円
1,500万円ー900万円=600万円

つまり預金相殺を行う事で、
この会社の場合は年間の経常利益が6百万もUPする事になります。

今まで社長がコツコツ貯めてきた定期預金や定期積金。

今が「預金解約のススメ」時なのかも知れません。

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