「小さな会社のための正しいリスケの進め方」(同文館)の出版に続き、
「月間銀行実務」12月号に「特別企画」を寄稿しましたので、
機会あれば是非ご覧下さい。
さて、今回は微妙なニュースを取り上げたいと思います。
先日私のクライアントの社長から電話がありました。
「宮内さん、今日の日経新聞みた?」
「この記事の通りやったら、
借入金が資本金になって、銀行に返さんでもええようになるらしいんやけど」
という問い合わせがありました。
…クライアントも私と同じく大阪人ですので、ベタな大阪弁で
借りたお金が資本金になって、返さんでもようなる????
「確かにあの新聞記事だけみたら誤解する人もいるわなー」と
感じましたので、今日のメルマガのお題にさせていただきます。
平成23年11月22日、金融庁は『「資本性借入金」の積極的活用について』、
と題する発表を行っています。
クライアントはこのプレスリリースの新聞記事を見て、
私にTELしてきた訳です。
リリースの要点を列記しますと、次のようになります。
・震災の影響で資本が毀損している、
又は円高の影響で財務内容が悪化している企業が今回の対象
・金融当局はそれらの企業に対して、
資本性借入金の積極的な活用する事を推進する
…DDS、デッド・デッド・スワップという手法…
既存の借入金を返済順位の低い借入金に置き換える事。
返済順位の低い借入金は、資本とみなす事ができる。
・つまり、既存の「借入金」をDDSで「資本性借入金」に変更すると、
⇒見かけ上の借金が減少し、資本が増加する…何かトリックのような感じ…
⇒バランスシートが綺麗になる…自己資本は増えるし、借金は減るし…
⇒債務者格付けが上がる…銀行の付けているランキングが上がる
⇒その結果、新規融資が受けやすくなる、というものです。
格付けについては、別のメルマガで説明した事があるので割愛しますが、
このリリースによって「よう判らんけど、早速銀行に依頼してみよ」
という社長がいらっしゃるかも知れません。
しかしながら、私見ですがこの制度、ほとんどの中小、
特に零細企業には当てはまらないと思われます。
まず何より、借入金は借入金です。
一時的に資本性のものに振り替えたとしても、
将来は必ず返さなければなりません。
借入金が無くなる事は決してありません。
又、銀行から見て「絶対返してもらえる見込のある企業」が対象で、
「今しんどいから、とにかく助けてほしい」という企業に
対象になりえません。
見方を変えれば、銀行が絶対助けなければならない企業は対象になりえます。
つまり大口先すぎて、
倒産でもされたら銀行が赤字決算になりかねない企業です。
しかし、ほとんどの中小企業はここには当てはまらないでしょう。
更にこの手法、実は以前から存在しています。
今回の方針発表は、
既に存在するDDS(劣後債=返済順位が低く資本とみなす:金利0.4%)
という手法を、実務的に使いやすくした、
という程度のものでしかありません。
しかし、一般の中小企業経営者には、そんな事は判りませんよね。
政府にとっては、大震災や急激な円高で苦しんでいる中小企業を助けたい、
と思っての事かもしれませんが、
現実にはそんな理由で恩恵を受ける中小企業は少ないでしょう。
(私に連絡してくれたクライアントのように)経営者にとって、
政府の施策をウォッチするのは大事な事とは思います。
しかし中小零細企業が、そのよう施策の恩恵を蒙る事は少ないと思われます。
経営者にとって大事な事は、自社の現状を直視し、
日々不断の努力を続ける事です。
弊社はそんな中小零細企業を全力でサポートします。
ご相談があればお気軽にご連絡いただければと思います。