浪速の体育会系ターンアラウンドマネージャー、宮内です。
事業再生コンサルには多様なスキルが求められます。実践経験だけでなく、
経営・法務・財務等の専門知識を補完する意味で、
私もCTP・事業再生士という「資格」を取得しています。
資格を取る為にそれなりに勉強したのですが、
教科書には「経済合理性」というキーワードが
重要な意味でとして登場します。
まぁー軽いノリで言えば、「金銭的にソンかトクか??」という
「あたりマエダのクラッカー」な話です。
事業再生コンサルタントは、その事業が再生するか否か厳しい状況の中で、
各ステークホルダー(金融機関や取引先等)に対し、
「経済合理性から考えて、そちら様にもメリットがあります」を
殺し文句として、納得していただく職業かもしれません。
しかし世は神羅万象。ナカナカ一筋縄では行きません。
「トクやねんからええやん!!」という当たり前が、
なぜか当たり前に通らない局面に、多々遭遇します。
という事で、
私が経験した「ソンかトクとかっていう問題ちゃうんや!!」のお話。
その1
「70ん歳の社長が経営する不動産賃貸業」「事業承継者不在」
「所有不動産のテナント減少で、銀行返済が遅延」
「やむなく事業清算を決意」
「担保不動産の任意売却で借入返済を金融債権者に申し入れ」
「無事市場実勢よりやや高めの価格での買い主出現」
「残債務については、社長が高齢かつめぼしい財産も無いので事実上棚上げ」
…という事業再生の世界ではありがちな交渉を行いました。
話がトントン進む中、突如債権者の担当者から、「過去の決算書がおかしい」
「今後の支払いはどうするのか」という、そもそも論の蒸し返しがスタート。
あげくの果てに「誠意が無い」
「別にこっちは任意売却から不動産競売に切り替えてもええんやで!!」
という強硬話を持ち出す始末…
「どう考えても、この任意売却は経済合理性が高い」
「なぜ担当者は急に態度を変えたのか」といぶかしんでいると、
社長から「今の担当者は居丈高で態度が悪いので、TELを無視して、
必要な連絡は直接支店長に取っていた。
そんな事に腹を立てているのでは…」との事。
「そんなアホな!」とは思ったものの、
担当者は顔を潰されたと感じたことへの意趣返しである事が判明。
あの手この手で担当者の機嫌をとりなすと、支店長はあっさり了承し、
無事任意売却が完了しました。
反省…担当者の立場とメンツを潰してはいけません(^▽^;)
その2
「食品製造業社」「輸入品に押され第二工場閉鎖」
「幸いスポンサーが現れ、オーナーチェンジ」
「社長は代表者としてとどまり、社員の雇用も継続」
「資金繰り不安払しょく」
「社長による株式の将来買戻しもOK」…というオプション付のHappyシナリオ
ところがスポンサー契約の基本合意に達し、
本契約調印目前でひと悶着が発生。
スポンサーに利のある契約にも関わらず、
契約書文言の随所に「社長は全てオーナーに従え」文言の列挙。
「これでは話が違う」と社長はスポンサー会社の担当役員にクレーム。
侃々諤々の協議の末、スポンサー会社を持ち上げる文言を採用しつつ、
内実はほぼ平等な契約に変更する事に合意。
スポンサー会社の担当役員曰く
「経済合理性ちゃいますねん。ウチの社長のメンツなんですわ~」
とまあ二つの例の例ですが、「経済合理性」だけでは解決せず、
「相手の立場とメンツを立てる事が成否を決する事がある!」というおハナシ
若い時はイケイケドンドンな私ですが、こんな経験で円くなりました。
以前は、「経済合理性」を強硬にステークホルダーに
主張した事もありましたが、今は反省。
交渉のスタート時点では「そちらのお顔とお立場もありますもんねー」と
柔らかく始めるようにしています。
別に私のメンツはいりません。クライアントに再生していただくのが目的です。
そういえば最近、某国と某国が仲悪いですねー・・・
あんまり経済合理性だけでハナシせず、
まずは「互いのメンツと立場を理解する」ように努めれば、
結構円く収まるようにも思いますけどねー。
依頼があればお手伝いしようかな(笑)