「この決算書どんな会社のだと思う?」と言われ、
某社の決算書を手渡されました。
もしかして粉飾を見破れと試されているのかな?と思いつつ見始めました。
1.表紙に、●×株式会社 第○○期決算書とあります。
聞いたことのない社名でしたが、
○○期から古くからある会社さんだという事だけは分かりました。
2.損益計算書を見てましょう。
売上は約20億円、営業利益は前期は黒字、今期は赤字。
経常利益は、営業利益からどれだけ減るかと思っていると、
ほとんど変わらず。粗利率は、どうだろう?ありゃ低い。
3.ここまででの情報から、以下を予想しました。
売上規模からすると、中小企業だな。
営業利益からは、極端に良い業界、悪い業界に属している訳ではなさそう。
程度しか言えないかなあ。
経常利益からは、無借金に近い事が分かる。
粗利率は低いぞ、メーカーかな?卸し業かな???
歴史は相当長い。
4.続いて貸借対照表です。
えっ間違い?と一瞬思いましたが、
自己資本100億円です、売上は20億円なのにですよ。
借入はありません、これは経常利益から予想した通りです。
売掛金、棚卸資産を膨らまして良く見せているのかなと思うと、
大した額ではありませんね。
不動産を過大計上している訳でもなさそうです。
つまり、本当に100億円の自己資本があるようです。
自己資本比率は90%を超える水準です。
5.びっくりするくらい財務体質の良い会社です。
売上20億円で毎年1憶円の赤字でも、債務超過まで100年掛かります。
絶対つぶれないでしょう。
6.就活中のお子さんを持つ社長さんへ
家業を継がないならば、こういった会社へ就職してほしいですね。
人気業界だったマスコミ、大手総合家電、航空会社等も
ここ10年で一気に負け組です。
唯一元気だった総合商社も、資源頼みの決算で、
資源価格暴落すれば赤字に転落でしょう。
7.話を元に戻しますよ。
どんな会社か、わかりましたか?
答えは、京都にある某伝統商品の卸し業者さんでした。
100年以上コツコツと真面目に利益を重ねていった結果がこの決算書です。
オーナー一族の現社長は大変腰の低い方で、倹約家でもあるそうです。
8.新興IT企業の社長さんがメディア等で、
派手な私生活を取り上げられているのとは大分異なりますね。
パッと咲いて、パッと散るのも良いですが、
この卸し業者さんのように子、孫、まだ見ぬ曾孫へと
事業を承継したいですね。
9.「何をのんきなことを。こっちは年末の資金繰りも見えないのに」という
読者もいらっしゃるでしょう。
そういう方は、小職と一緒に窮境状態から抜け出して、
この卸し業者さんを目指しましょう。