本号は、喜望大地代表の喜多洲山から
インタビュー記事にて、新刊のご案内です。
注:長文なので、ご興味のある方は、お読みください。
*「株が売れずに困っている人は少なくない」
保有する非上場株式が人生を苦しめる?*
家族や親戚が中小企業を経営しており、
その株式の一部を保有しているが、
配当金も出ないため、売却したい。
身内が持っていた中小企業の株を相続することになったが、
巨額の相続税が発生しそう。
実はこうした非上場株式の存在に悩む人は少なくないと
語るのが企業再生コンサルタントの喜多洲山氏だ。
今回は非上場株式を換価するための方法を解説した
『少数株主のための非上場株式を高価売却する方法』(幻冬舎刊)
を上梓した喜多氏にお話をうかがい、
そのなかなか知られていない実情について語っていただいた。
■実は売却できずに困っている人が多い「非上場株式」
*――『少数株主のための非上場株式を高価売却する方法』
についてお伺いしていきます。
まずはどんな方に向けた本なのでしょうか。*
洲山:何らかの事情で親や祖父・祖母から非上場株式を
相続したり、共同で創業したけれど途中で袂を分かちあったり、
家族に経営者がいて、自分は経営にタッチしていないけれど、
それなりに株式を持っていたりというような方々がいます。
彼らは自分の持っている株を買い取ってほしいけれど、
何らかの事情で会社が買い取ってくれないというケースがあります。
そういった方々に、株式を換価できるということを
啓蒙する目的でこの本を書きました。
*――なぜ自分の持っている株を買い取ってほしいのでしょうか。*
洲山:株価はそれなりの価値があるけれど、配当金が出ない。
経営に携わっていないので役員報酬がもらえないといった理由ですね。
また、もう一つの読者ターゲットとしては、
未上場株式を持っている方と関わりのある税理士や弁護士の先生方です。
私は「株式買取相談センター」という非上場株式の買取を専門とする
組織を運営していますが、そこで得た非上場株式を高い価値で
換価できるノウハウをこの本で明かしています。
*――株式の売買に知識がない方向けに、上場株式と非上場株式の
売却方法の違いについて教えてください。*
洲山:上場株式は証券会社に持ち込めば誰でも株式を売却できます。
ただ、非上場株式はそうした場所がないんです。
証券会社に持ち込んでも扱ってはくれません。
だから、非上場株式の場合は、発行している会社に買ってもらうか、
会社から売り先を指名してもらうかがメインです。
*――個人間で売買をすることはできないのですか?*
洲山:株式譲渡の原則に基づいて、株は誰でも自由に売買可能です。
ただ、非上場株式のほとんどは譲渡制限がついています。
これは売買をする際に、取締役会や株主総会など、
会社の承認が必要であると定款で定められた株式のことです。
認められないと、株主としての権利を主張することができない。
*――なるほど。経営者の権力を守る作用が大きい。*
洲山:そうです。変な人が経営に入り込んできたら困るでしょう。
一方で株主にも権利があります。
一株持っているだけで、株式代表訴訟もできてしまうわけですから、
株を持たれるって実は大ごとなんです。
株式比率3%以上になると、会計帳簿の閲覧権も主張できます。
*――非上場株式を持っていることのデメリットはなんでしょうか。*
洲山:最大のデメリットは、
株は資産になるので相続時に税金がかかることです。
同族企業で株を持っている親戚が亡くなり、株を相続することになった。
その資産が例えば6億円以上であれば、55%の相続税が発生するわけです。
仮に1億円なら40%の相続税が発生するので、4,000万円納税が必要です。
それをどうやって払うのかということです。
*――なるほど。株を売ろうともなかなか換金しにくい。*
洲山:株券で相続税を払うことはできません。現金を用意しないといけない。
ここが一番のデメリットポイントであり、最大のリスクなんです。
また、同族企業の場合、経営に関わっている場合は
役員報酬がもらえますが、まったく携わっていないのに
株だけ持っているケースだと、税金を払わされて終わりですからね。
*――非上場株式を持っている人は
困っているケースが多いということですね。*
洲山:そうです。価値算定されて1000万円の価値があると言われても、
買い取る人がいなければそれはただの紙切れに過ぎません。
だから、非上場株式を持っている自分が亡くなった場合、
相続する側が苦労することも考えられるんです。
自分の相続で、
子どもが家を売らないといけないとなるのは本末転倒ですよね。
*――本書には様々な事例が登場します。*
今おっしゃられていた相続時のトラブルであったり、
同族企業でやっていたのに関係のこじれから追い出されてしまったり。
これらは実例をもとにしているんですか?*
洲山:はい。もちろん、実例そのまま書くと問題になるので、
ある程度はフィクションを入れています。
*――今は喜多さんの運営する「株式買取相談センター」がありますが、
そこを介して非上場株式の売却先が見つかることがあるんですね。*
洲山:そうです。この本でも書きましたが、
基本的には我が社が(株式を)換価できると思えば買い取ります。
お客様からの資料をいただいて、
「これくらいの額ならば我が社が買い取ります」
という提示をするんですね。
*――非上場株式の売却について
詳しく知るにはどうすればいいのでしょうか。*
洲山:非上場株式の売却方法について本はおそらくこの本と、
牛島信先生の『少数株主』という本くらいしかありません。
牛島先生の本は小説仕立てで理解できるようになっているので、
この2冊を読むといいと思います。
あとは、弁護士や税理士さんにご相談するという方法もありますが、
少し敷居が高いと思います。
我が社は面談も株価鑑定も無料で受け付けていますので、
気軽にお使いいただいています。
■可能性を秘めている非上場株式のマーケット
*――洲山さんの立ち上げた「株式買取相談センター」というサービスは
今までになかったとうかがっています。
きっかけはなんだったのでしょうか。*
洲山:私の本業は事業再生コンサルタントなのですが、
同業の友人から、親族と喧嘩をして会社を追いやられてしまった
女性の相談に乗ってくれないかと言われたのが最初でした。
もともと父親が社長で、自身は監査役をしていて、
株も持っていたんですが、跡を継いだ兄によって
監査役をクビにされ、配当も出ないと。
なんとか換金できないかということでした。
その時は私にもノウハウがありませんでしたから、
自分なりに会社法を学び、その女性と契約をして、
会社に株の買い取りを相談したんですね。
そうしたら、相手の会社は弁護士を立てて、
非訟事件として裁判にかけて株価を決めましょうということになったので、
こちらも公認会計士の先生に相談をしたり、
不動産もお持ちだったので、
不動産鑑定士に不動産価格の算定をお願いしたりとして、
結果的に株価は1億円を超える金額になったんです。
*――なるほど、実務で非上場株式の売却方法のノウハウを
築き上げていったわけですね。*
洲山:そうです。知人の弁護士の先生のところに寄せられた
相談に応じたりして、自分が株式を買い取り、
譲渡承認を会社側にしてみたら、先方がそれを認めたので、
我が社が株主となって1年半くらいしてから
株を買い取ってもらったという事例もあります。
*――本書のタイトルに「非上場株式を高価売却する方法」と
ありますが、そのコツはなんでしょうか。*
洲山:交渉事なので、落としどころを設定した上で、
いかにその落としどころの根拠を示かということが重要だと考えています。
いわゆる株価の評価ですが、これは本その第3章で詳しく説明しています。
「ネットアセット・アプローチ」「インカム・アプローチ」
「マーケット・アプローチ」という3つの評価方法があり、
それぞれ長所と短所があります。
こちらは本書の第3章で詳しく説明しているのでぜひ参考にしてください。
交渉はエネルギーが必要で、実際に帳簿閲覧権を行使して、
帳簿を閲覧しに行ったことも何度かあります。
会社側からすると、黙っておいてほしいところを、
株主として、ガバナンスに関して面倒なことを言ってくる存在
だと私たちのことを思っているでしょう。
それに株式を買うには、キャッシュが減るわけですしね。
*――2018年にこのサービスを立ち上げられて2年ですが、
状況はいかがですか?*
洲山:このサービスのことをまったく外に広めていないのですが、
それでも20件ほどの取り扱いをしてきました。
*――ニーズがある、と。
非上場株式のマーケットについてどんな可能性を感じていますか?*
洲山:大きなマーケットに成長できると考えています。
財務省の企業調査によれば、
資本金1億円以下の企業の内部留保は160兆円あると言われています。
その0.01%でも160億円になるわけですが、
規模的には年間100億円くらいのマーケットになる可能性があると
私は思っていますね。
もともと中小企業のM&Aも、
日本M&Aセンターという会社がマーケットを開拓し、
今や一つの大きな市場となっているわけですよね。
ですから、株式買取ビジネスもニーズは膨大にあると考えています。
*――本書をどのような人に読んでほしいとお考えですか?*
洲山:非上場株式を持っていて、
それをお金に換えたいと思っている人ですね。
また、そういった方々にアプローチできる税理士や弁護士の先生に
読んでいただければ参考になると思います。
*――ぜひここを読んでほしいというポイントが
ありましたら教えてください。*
洲山:税金や株式の評価の方法は分かりやすく書いたつもりです。
ただ、専門的な話が続くので、70代や80代の方が読むには
少し内容が重く感じるかもしれませんが、
参考程度に抑えていただいて、
その上で税金の専門家である税理士に相談してもらえると
いいと思います。
自分の持っている株がお金に換わるということが
分かってもらえるだけでもありがたいですね。
*――本書の事例集の中に、
非上場株式の相続を2度行った女性がでてきますが、
2回目の相続の際に相続税が27倍になっていて、
なおかつ家族仲のこじれで八方ふさがりになる姿を見てゾッとしますね。*
洲山:もちろん、仲が良いご家族もあるのでしょうけど、
一方で仲違いしてしまっている家族もあります。
骨肉の争いは珍しくないことで、
このビジネスをやっていると何度もそういう場面に
出くわします。
当事者間で話し合いができない場合は、
私たちのような赤の他人が入ることでスムーズにいくことも多いんですよね。
*――自分自身が不幸なことにならないように、
心当たりがある方には読んでほしい一冊ですね。*
少数株主のための「非上場株式を高価売却する方法」はこちらから