会社分割とは、株式会社(又は合同会社)が、その事業に関して有する権利・義務を分割して他の会社に承継させる手続のこと。
そして、会社分割の中でも、すでに存在している会社(既存会社)に承継させる場合を「吸収分割」、新しく設立する会社(新設会社)に承継させる場合を「新設分割」と言う。
1.会社分割は、株主総会の特別決議が必要。
2.会社分割は事業に関する財産・権利義務を一括移転する(包括承継)ことができる。
3.会社分割では、契約関係(債権・債務)が丸ごと全て相手方に移転されるので、
相手方の同意等を得る必要がない。
しかし、会社分割の場合は、債権者の利益が害されるおそれがあるので、
債権者保護の手続が設けられている。具体的には、分割会社は、分割後に分割会社に対して債務の履行を請求できなくなる債権者等がいる場合には、債権者が一定期間(1ヶ月以上)内に異議を述べることができること等の所定の事項を官報で公告し、各債権者に個別に催告しなくてはならない。
また、債権者が異議を述べると、分割会社は、債務の弁済や担保の提供、財産の信託等をしなくてはなりません。
4.雇用関係の移転については従業員の同意は不要である、が、労働承継法が適用されるため、
労働承継法所定の手続を経る必要があり、正社員・嘱託職員・パートタイマーにも適応される。
(1)労働承継法の手続
分割会社は、事前に、労働者と話し合う必要あり。
次に、分割会社は、労働者(労働組合)に対して、
会社分割について書面で通知する必要があります。
(2)労働契約の承継
承継される事業に主として従事している労働者との契約は、
分割契約中に承継される旨の定めがあるときは、そのまま承継されます。
承継される旨の定めがなければ、労働者は、異議を申し出ることができ、
そして実際に異議の申出がなされれば労働契約が承継されます。
それ以外の労働者との契約は、分割契約中に承継される旨の定めがあり、
かつ異議の申出がなければ承継会社に承継されますが、
異議の申出がなされたときには承継されません。
5.許認可の移転について
会社分割では、許認可ごとに取扱いが異なる。具体的には、以下の通り。
(1)承継されるもの※事後的な届出等は必要です。
浴場業の許可(公衆浴場法第2条の2第1項)
興行場営業の許可(興行場法第2条の2第1項)
飲食店営業の許可(食品衛生法第53条第1項)
クリーニング業法の許可(クリーニング業法第5条の3第1項)
(2)行政庁の許可等が必要なもの
一般自動車運送事業の許可(道路運送法第36条第2項)
旅館業の許可(旅館業法第3条の2第1項)
(3)承継が認められていないもの※新たに取得する必要があります。
宅地建物取引業の免許
貸金業の登録
6.課税関係について
会社分割の場合、消費税は課税されない(消費税法施行令第2条第1項4号)ほか、
登録免許税・不動産取得税等で軽減措置を受けることが可能である。