株式集約とは?メリットと集約方法を解説

株式集約の目的は敵対的な少数株主の排除と会社運営の円滑化、M&Aへの布石が主です。
それらの目的を達成するためには株式を最低でも50.1%以上(過半数)集めることは必須、欲を言えば66.67%以上(3分の2以上)が望ましいです。

その理由というのも、特別決議は 、原則として、「議決権を行使できる株主の過半数の株主が出席し、出席した株主の議決権の3分の2以上に当たる多数をもって行う」とされているからです(会社法309条2項)。

3分の2以上の議決権があれば、ほとんどの意思決定をコントロールできます。逆を言えば、半数以下であれば他の株主側が有利になってしまい、意思決定に時間がかかったり、株主対応に時間や費用が多く発生したりする事になります。
ここでは株式集約の目的やメリット、方法や流れ、注意点や状況に応じたオススメの集約方法などを解説していきます。

株式集約とは?

株式集約とは、複数に分散している株式を会社の自己株式か社長もしくは社長に友好的な株主に集めることです。

株式集約の目的とメリット

株式集約の目的とメリット

株式集約の主な目的は敵対的な少数株主を排除することです。
メリットは、会社の意思決定を阻害されないようにしたり、役員の解任リスクを回避したりするなど様々です。
株式集約の目的とメリットの詳細は下記を参照。

目的メリット
敵対的な少数株主を排除可能多くの目的とメリットに関係するのが「敵対的な少数株主の排除」です。
少数株主には様々な権利があります。
1株でも所有していれば様々な権利を行使し、悪意を持って会社運営を阻害することも可能です。
敵対的な少数株主を排除することで多くのリスクを回避することが可能です。
株主対応の煩雑性を回避1株でも保有していれば、株主総会に出席する権利があります。
株主全員の同意があれば、株主総会の招集手続を省略したり、書面による決議を行うことが可能ですが、一人でも非協力的な株主がいると、これらの方法は採用できません。
株式集約により、煩雑な株主対応を回避することが可能です。
株主代表訴訟の回避1株でも保有していれば、株主代表訴訟が可能です。
会社役員の意思や行動によって会社に損失があったときに、会社に代わって株主が責任を追及することが可能です。
株式集約を行っておけば、株主代表訴訟が提起され、その結果、役員が会社に対して損害賠償を支払わなければならないなどのリスクを回避できます。
スムーズな意思決定が可能会社の重要な意思決定は株主総会で行われますが、反対する少数株主がいると意思決定までに時間がかかる可能性が高くなります。また、総会の中で思わぬ動議が提出される可能性もあります。
敵対的な少数株主を排除することは、株主総会の意思決定をスムーズに行えるというメリットがあります。

このように非上場株式を集約しておくことは様々なメリットがあります。

会社法第847条:株主代表訴訟(クリックで開きます)
株式保有割合と権利内容(クリックで開きます)

株式分散のリスク

株式分散のリスクはいくつか考えられますが、やはり少数株主による権利行使が最も大きなリスクとなるでしょう。                                                                                                                                                

株主分散のリスク
少数株主の権利行使リスク会社の意思決定が困難になる会社の重要な意思決定は株主総会で行われますが、反対する少数株主が存在するだけで意思決定までに時間がかかる可能性が高くなります。
株主の管理と対応が増える事務コストが増える1株でも所有していれば配当を受ける権利があるので、蔑ろにはできません。
少数株主としての権利行使にも対応しなければならないので、株式が分散すればするほど事務作業が増え、対応に時間と人件費が増大するリスクがあります。
事業承継が円滑に進められない事業承継税制が使えないリスク事業承継税制(事業継承時の納税猶予と税額免除制度)を利用するには同族内で全体の50%超の議決権が必要です。
事業承継時には膨大な贈与税や相続税の負担を強いられますので、事業承継税制を利用できないと円滑に事業承継を行えないリスクがあります。

株式を分散させることはリスクが大きく、将来的に会社運営の障害となる可能性もあります。

そもそもなぜ株式が分散しているのかというと、役員や従業員への株式の譲渡、取引先や支援者による株式の引受け、相続による株式の承継 などで複数人に保有されてしまったことが原因です
過去に一度でも分散した株式は、相続される事などで更に分散していきます。
その期間が長ければ長いほど追いかけるのが大変になります。

もちろん株式分散はリスクやデメリットだけではなくメリットもあります。
株式を役員や従業員、取引先に譲渡しておくことで信用を得られ、会社との繋がりを強調することができます。
他にも株主の持ち株割合や立場によって評価方法・評価額が変わることがあり、節税効果が期待できるなどのメリットもあります。

株式分散が絶対的に悪いということではありません。
株式分散していることが、会社の状況や将来的な運営の妨げになる可能性がある場合には、リスクやデメリットも考えてみましょう、というものです。

株式を集約する方法

株式を集約する方法

株式を集約する方法は大きく2つの方法に分けられます。

  1. 強制的に株式の全部を集約できる方法
    • 交付金合併
    • 株式交換(現金交付)
    • 株式移転
    • 自己株式の取得(全部取得条項付種類株式)
    • 株式併合
    • 自己株式の取得(特別支配株主による株式等売渡請求制度)
  2. 合意によって株主から株式を集約していく方法
    • 株式譲渡

強制的な株式集約(スクイーズ・アウト)

スクイーズ・アウトとは、株主の承諾を得ずに強制的に金銭を対価として、少数株主が保有する株式の全部を取得することを言います。
強制的に株式を取得できる反面、対価の支払いが高額になったり、株主との間に問題が生じたり、裁判に発展することもあります。
スクイーズ・アウトからの裁判事例:https://result.kigyobengo.com/other/8176

強制的に株式集約する5つの方法
交付金合併株主総会決議に基づき、存続会社は消滅会社の株主に対して、対価として株式ではなく金銭を交付することで、消滅会社 の少数株主を排除できる。
株式交換(現金交付)株主総会決議に基づき、親会社は子会社の少数株主に対して、対価として株式ではなく金銭を交付することで、子会社の少数株主を排除し、子会社を親会社の100%子会社化できる。
株式移転既存の会社が新規に親会社を設立し、発行済み株式をすべて取得させることで株式を集約できます。
株式移転は、新規に親会社を設立して株式を集約するという点において、既存の親会社が株式を集約する株式交換と異なります。
自己株式の取得(全部取得条項付種類株式)定款に定めがあれば、株主総会の特別決議により、会社は全部取得条項付種類株式の全部を取得することができる。
普通株式を全部取得条項付種類株式に転換後、会社は一度全部取得し、その後、たとえば、100株に対し1株の割合で新たに株式を割当てるとすると、50株を保有していた株主は0.5株の1株未満の端株しか保有できなくなる。
これにより、端数を有することになった株主から、会社は強制的にその株式を買取ることができる。
株式併合株主総会の特別決議により、会社は既存の複数の株式を1株に統合することにより、発行済み株式数を減らすことができる。
たとえば、100株を1株に統合すると、50株は0.5株となり、1株未満の端株となる。
会社は、端株を有する株主からその株式を強制的に買取ることができる。
自己株式の取得(特別支配株主による株式等売渡請求制度)対象会社の総株主の議決権の90%以上を有する株主(特別支配株主)は、対象会社の承認を受けただけで、他の株主(少数株主)から、対象会社の株式等の全部を強制的に取得することができる。

合意による株式集約

あくまで株主との合意の下で行われ、対価となる金銭に納得すれば売買が成立するものです。
株主の合意による株式集約の最大のメリットは、株式集約を円滑に進められる点です。

合意によって株主から株式を集約していく方法
自己株式の取得(株式譲渡)株主を売り手、集約側が買い手として、双方合意の元で株式の売買を行って集約する。

(*1)種類株式
普通株式とは異なる「種類株式」を利用する手段もあります。
種類株式は柔軟な選択が可能です。
例えば、株式を保有していても議決権を行使できないようにしたり、株式を譲渡するときに会社の承認を必要にしたり、会社が特別決議によって株式を全部取得することができるようにしたりできます。

種類株式は9つの項目(剰余金の配当・残余財産の分配・議決権の制限・譲渡の制限・取得請求権・取得条項・全部取得条項・拒否権・役員選任権)において権利内容を設定できるものです。
これらを利用していれば株式が分散していたとしても、株式集約を円滑に進められたり、会社の意思決定を阻害できないようにしたりできます。

ただし、種類株式の発行には定款変更や登記申請が必要となるため、株主総会の特別決議の可決などの過程に時間と手間がかかることから、事前に対策を取っておくことが必要です。

種類株式によって設定できる権利9つ(クリックで開きます)
クリックで成功事例に飛びます
株式集約の成功事例(喜望大地)

株式集約の流れ

それぞれの手法に応じた株式集約の流れを解説していきます。

交付金合併の流れ

交付金合併
  1. 取締役会決議
    まずは、交付金合併の実施を決定するために、取締役会で決議を行います。
  2. 合併契約の締結
    まずは、合併の合意を示す合併契約を締結します。合併契約には、以下の内容を記載します。
    • 合併の効力発生日
    • 合併対価の額
    • 合併後の存続会社の商号や所在地
  3. 事前開示書類の備置
    交付金合併契約を締結した後、事前開示書類を作成して、本店に備置します。
    事前開示書類には、交付金合併契約の内容のほか、交付金合併に関する重要な事項を記載します。
  4. 株主総会での承認
    合併契約を締結した後、両社はそれぞれ株主総会において、合併の承認を得ます。
    株主総会では、合併契約の内容を株主に説明し、承認を得る必要があります。
  5. 債権者保護手続
    株主総会で交付金合併の承認を得た後、債権者保護手続を行います。
    債権者保護手続には、株主総会で交付金合併の承認を得た旨を官報に公告すること、債権者に対する通知を送付することなどがあります。
  6. 株式買取請求通知
    債権者保護手続を行った後、株式買取請求通知を発送します。
    株式買取請求通知は、交付金合併に反対する株主に対して、株式を買い取る旨を通知するものです。
  7. 合併登記の申請
    官報に公告した後、合併登記を申請します。

交付金合併のメリット

  • 合併対価を株式ではなく現金で支払うため、消滅会社の株主は現金を得ることができます。
  • 合併後の存続会社の株主構成を変更せずに、消滅会社の事業や資産を取得することができます。

交付金合併のデメリット

  • 合併対価を現金で支払うため、存続会社は資金調達が必要になることがあります。
  • 合併後の存続会社の株価が下落する可能性があります。

交付金合併は、合併後の存続会社の株主構成を変更せずに、消滅会社の事業や資産を取得したい場合に適した合併手法です。

株式交換の流れ

株式交換
  1. 取締役会決議
    まずは、株式交換の実施を決定するために、取締役会で決議を行います。
  2. 株式交換契約の締結
    取締役会決議後、株式交換の契約内容を定めた株式交換契約を締結します。株式交換契約には、以下の内容を記載します。
    • 株式交換の効力発生日
    • 株式交換比率
    • 株式交換後の存続会社の商号や所在地
  3. 事前開示書類の備置
    株式交換契約を締結した後、事前開示書類を作成して、本店に備置します。
    事前開示書類には、株式交換契約の内容のほか、株式交換に関する重要な事項を記載します。
  4. 株主総会での承認
    事前開示書類の備置後、株主総会において、株式交換の承認を得ます。
    株主総会では、株式交換契約の内容を株主に説明し、承認を得る必要があります。
  5. 債権者保護手続
    株主総会で株式交換の承認を得た後、債権者保護手続を行います。
    債権者保護手続には、株主総会で株式交換の承認を得た旨を官報に公告すること、債権者に対する通知を送付することなどがあります。
  6. 株式買取請求通知
    債権者保護手続を行った後、株式買取請求通知を発送します。
    株式買取請求通知は、株式交換に反対する株主に対して、株式を買い取る旨を通知するものです。
  7. 株式交換の効力発生
    株式交換の効力が発生すると、対象会社の株式は消滅し、対象会社の株主は存続会社の株式を取得します。

株式交換のメリット

  • 合併と異なり、完全子会社の株主が完全親会社の株式を取得するため、完全子会社の株主構成を変更することができます。

株式交換のデメリット

  • 株式交換契約の締結には、両社の取締役会の承認に加えて、株主総会の承認が必要となります。
  • 株式交換契約の内容を株主に説明し、承認を得る必要があり、手続に時間と費用がかかります。

株式移転の流れ

株式移転
  1. 株式移転計画の作成
    新規に設立する親会社の資本金や条件などを詳細に決定しておく必要があります。
    株式移転計画書を作成しておきましょう。
  2. 事前開示書類の備置
    株式移転完全子会社は、会社法で定められた次に掲げる日のいずれか早い日から、株式移転によって新設会社が設立された日以降6カ月を経過する日までの間、会社法で定められた一定の事項を記載した事前開示書類を、本店に備え置かなければなりません。
    • (株主総会の承認が必要な場合)株主総会の日(いわゆる「書面決議」の場合、株主総会の目的事項に関する提案につき株主の全員が同意の意思表示をした日)の2週間前の日
    • 株主に対する通知または公告の日のいずれか早い日
    • 債権者に対する催告または公告の日のいずれか早い日
  3. 株主総会による株式移転計画の承認決議
    株式移転を行うためには、株主総会で特別決議による承認が必要です。
    株主に対して招集通知を発する必要がありますが、公開会社の場合は2週間前まで、非公開会社は原則として1週間前までとされています。
    また、株式移転完全子会社は、その株主に対し、株主総会の決議の日から2週間以内に、株式移転完全子会社及び株式移転設立完全親会社の商号及び住所を通知します。
  4. 債権者保護の手続
    株式移転において、株式移転完全子会社から株式移転設立完全親会社への新株予約権の移転が行われる場合において、当該新株予約券が新株予約権付社債に付されたものであるときには、債権者保護手続が必要です。
    この手続では、原則として官報に公告し、さらに各別の催告を行います。
    ただし、官報公告と同時に日刊新聞や電子公告を行う場合は、各別の催告は省略できます。
  5. 反対株主からの株式買取請求
    株式移転完全子会社は、その株主に対し、株主総会の決議の日から2週間以内に、株式移転完全子会社及び設立会社の商号及び住所を通知し、又は公告します。
    株式買取請求権を行使する反対株主は、当該通知又は公告の日から20日以内に、当該権利を行使する必要があります。
    なお、株券が発行されている株式について株式買取請求をしようとするときは、株式移転完全子会社に対して、当該株式に係る株券を提出することとされています。
  6. 株券の証券提出手続き
    株式移転完全子会社が株券発行会社である場合には、株券の保有者に対して、株券を提出しなければならない旨を、株式移転が効力を生じる日の1か月前までに公告し、かつ、各別に通知しなければなりません。
    株式移転完全子会社は、株券の提出があるまで、金銭等の交付を拒むことができます。
  7. 株式移転の効力発生
    設立会社の設立登記日が効力発生日ですので、設立登記を行う必要があります。
  8. 新株発行・設立・変更の登記申請
    株式移転完全子会社は株式の保有者が移動するだけなので、基本的に登記は必要ありません。
    新株予約権を株式移転設立完全親会社に移す場合は、変更登記が必要です。
  9. 事後開示書類の備置・開示
    株式移転設立親会社の設立の日から6か月間、株式移転完全子会社及び株式移転設立完全親会社において、一定の事項を記載した書類を本店に備え置く必要があります。

株式移転のメリット

  • 株式移転の最大のメリットは株式を集約することに多くの資金を必要としません。
  • 組織に大きな影響を与えることが無いため、社員の雇用や賃金体系を守れる。

株式移転のデメリット

  • 新規に設立した会社が増えることによって、管理コストが増加します。

全部取得条項付種類株式の流れ

全部取得条項付種類株式
  1. 定款変更
    全部取得条項付種類株式を発行するためには、種類株式発行会社にならなければなりません。
    そのため、株主総会の特別決議を経て定款を変更して種類株式発行会社になる必要があります。
    定款変更の内容は、以下のとおりです。
    • 種類株式を発行する旨
    • 既発行の株式を全部取得条項付種類株式にする旨
    • 取得の条件
  2. 取得の決議
    全部取得条項付種類株式を取得するには、株主総会の特別決議が必要です。
    取得の決議においては、取得の条件を定める必要があります。
    取得の決議の内容は、以下のとおりです。
    • 取得の対象となる全部取得条項付種類株式の数
    • 取得対価
    • 取得日
  3. 取得の通知
    取得の決議が行われた後、全部取得条項付種類株式の株主に対して、取得の通知を行います。
    取得の通知は、取得の条件や取得の期限を記載した書面を送付します。
  4. 取得の実行
    取得の通知を受けた全部取得条項付種類株式の株主は、取得の対価を受け取ります。
    取得の実行は、取得の条件に従って行われます。

全部取得条項付種類株式のメリット

  • 少数株主の排除・100%減資
    全部取得条項付種類株式を発行することで、会社は株主総会の特別決議により、全部取得条項付種類株式を強制的に取得することができます。
    これにより、経営に介入する少数株主を排除することができます。
  • 敵対的買収の防衛策
    全部取得条項付種類株式を発行することで、会社は敵対的買収の防衛策として活用することができます。

全部取得条項付種類株式のデメリット

  • 株主の不信感
    全部取得条項付種類株式を発行することで、株主から不信感を抱かれる可能性があります。
  • 取得のコスト
    全部取得条項付種類株式を取得する場合、取得対価を支払う必要があります。

株式併合の流れ

株式併合
  1. 取締役会決議
    まずは、株式併合の実施を決定するために、取締役会で決議を行います。
  2. 株主総会での承認
    株主総会において、併合の割合、効力発生日を定めた上で、株式併合の承認を得ます。
  3. 官報への公告
    株主総会で株式併合の承認を得た後、官報に公告を行います。
  4. 株式併合の効力発生
    株式併合の効力発生日になると、株式併合が効力を発します。
    株式併合が効力を発すると、株主の保有していた株式は、併合の割合に従った株式数となったり、一株未満の端数となったりします。
    端数となった株式は単元未満株式と呼ばれ、会社が強制的に買い取ることができます。

株式併合のメリット

  • 少数株主の排除
    株式を併合して、少数株主の株式を一株未満の端数とすることで、経営に介入する少数株主を排除することができます。
  • 株式管理コストの抑制
    株式併合によって株主数・議決権数が減少し、経営の効率化が図れます。

株式併合のデメリット

  • 費用の増加
    株式併合によって、公告費用や株主への通知費用などが発生する可能性があります。

特別支配株主による株式等売渡請求制度の流れ

特別支配株主による株式等売渡請求制度
  1. 特別支配株主の決定
    対象会社の総株主の議決権の90%以上を有する特別支配株主は、対象会社の株式等売渡請求制度を利用することを決定します。
  2. 対象会社の承認
    特別支配株主は、対象会社に対して、株式等売渡請求を行う旨の通知を行い、対象会社の承認を得ます。
  3. 少数株主への通知
    対象会社は、特別支配株主の株式等売渡請求について、少数株主に通知します。
  4. 少数株主の売渡し
    少数株主は、特別支配株主の株式等売渡請求に応じて、株式等を売渡す必要があります。
  5. 株式等の取得
    特別支配株主は、少数株主から株式等を取得します。

特別支配株主による株式等売渡請求制度のメリット

  • 少数株主の排除
    特別支配株主は、株式等売渡請求制度を利用することで、少数株主を排除することができます。
    これにより、経営の効率化や経営の自由度を高めることができます。
  • 会社価値の向上
    特別支配株主が株式等売渡請求制度を利用することで、会社価値を向上させることができます。
    これは、少数株主の排除により、少数株主を意識することなく思い切った構造改革等の経営を行うことができるようになるためです。

特別支配株主による株式等売渡請求制度のデメリット

  • 株主の不信感
    特別支配株主による株式等売渡請求制度は、株主の不信感を招く可能性があるため、注意が必要です。
  • 取得対価の算定
    特別支配株主は、少数株主から取得する株式等の取得対価を算定する必要があります。
    取得対価の算定が不当であると、少数株主から訴訟に発展する可能性があります。

株式譲渡の流れ

株式譲渡
  1. 譲渡承認の請求
  2. 取締役会又は株主総会での承認
  3. 決定内容の通知
  4. 株式譲渡契約の締結
  5. 決済の手続
  6. 株主名簿の書き換え、証明書の交付

株式譲渡のメリット

  • 双方とも合意あり、荒波を立てずに株式を集約することができる。

株式譲渡のデメリット

  • 双方が合意しない限りは株式を集約することはできない。
    特に売り手が拒む場合には、強制力がないことから株式集約の難易度が非常に高くなる。

株式集約の注意点

株式集約には注意が必要です。
強制的に株式を集約しようとしても株主からの反発が起こります。
株主が協力的な場合、非協力的な場合、それぞれの状況に応じた株式集約の方法を選択しましょう。

株主の不信感に注意
株式集約は、株主の不信感を招く可能性があります。
株主の不信感を招かないよう、透明性のある手続を踏むことが重要です。

費用の増加に注意
株式集約には、費用が発生する可能性があります。
費用の増加を抑えるため、適切な方法を選択することが重要です。

株主が協力的な場合にオススメな株式集約方法

  • 合意による株式集約
    話し合いによって株主から株式を譲り受ける方法です。
    株主の同意を得て株式を譲り受けることで、株式を集約することができます。

株主が非協力的な場合に取り得る株式集約方法

  • 全部取得条項付種類株式の取得
    定款の定めにより全部取得条項付種類株式を発行して、株式を取得する方法です。
    株主総会の特別決議を経て、全部取得条項付種類株式を取得することで、少数株主を排除することができます。
  • 株式の併合
    株式を併合する方法です。
    少数株主の株式を一株未満の端数にすることで、少数株主を排除することができます。
  • 特別支配株主による株式等売渡請求制度の利用
    特別支配株主による株式等売渡請求制度を利用して、株式を取得する方法です。
    対象会社の総株主の議決権の90%以上を有する特別支配株主は、対象会社の承認を受けた上で、他の株主(少数株主)等が有する対象会社の株式等の全部を強制的に取得することができます。

株主の協力状況や経営の目的などに合わせて、適切な方法を選択することが重要です。

株式集約に関するFAQ

Q
株式併合とは?
A
株式併合とは、いくつかの株式を合わせてそれより少ない数の株式や一株未満の端数とすることです。
一株未満の端数とした場合には経営に介入する少数株主を排除することができます。
Q
株式集約を行う目的は?
A
・経営の効率化
株式集約を行うことで、少数株主の意見を反映する手間が省け、経営の意思決定が迅速化されます。
・経営の自由度向上
株式集約を行うことで、少数株主の反対を気にせず、経営方針を変更することができます。
Q
株主が協力的な場合の株式集約方法は?
A
・株式の譲渡
株主から株式を譲り受ける方法です。
株主の同意を得て株式を譲り受けることで、株式を集約することができます。
Q
株主が非協力的な場合の株式集約方法は?
A
・全部取得条項付種類株式の取得
全部取得条項付種類株式を発行して、株式を取得する方法です。
株主総会の特別決議を経て、全部取得条項付種類株式を取得することで、少数株主を排除することができます。
・株式の併合
株式を併合して、少数株主の株式を一株未満の端数とすることで、少数株主を排除することができます。
・特別支配株主による株式等売渡請求制度の利用
特別支配株主による株式等売渡請求制度を利用して、株式を取得する方法です。
対象会社の総株主の議決権の90%以上を有する特別支配株主は、対象会社の承認を受けた上で、他の株主(少数株主)等が有する対象会社の株式等の全部を強制的に取得することができます。
Q
株式集約の注意点は?
A
・株主の不信感
株式集約は、株主の不信感を招く可能性があります。
株主の不信感を招かないよう、透明性のある手続きを踏むことが重要です。
・費用の増加
株式集約には、費用が発生する可能性があります。
費用の増加を抑えるため、適切な方法を選択することが重要です。
Q
株式集約の際には、どのような税金が発生しますか?
A
・株式譲渡所得税
株式集約する際、ほとんどが非上場株式の譲渡に該当するかと思いますが、この場合、税率20.315%の所得税が申告分離課税されます。
非上場株式は、一般株式等グループに区分され、同一グループ内の売却損益と損益通算することができます。(なお、上場株式等グループの売却損益とは通算できません)
また、損益通算後の売却損益は翌年以降の繰越はできません。
注意
  1. 2023年11月21日時点での法律、税率に基づきます。
  2. 法改正による影響と納税者の個別によっては、事情が相違するケースがありますので、実行される場合は必ず顧問税理士にご確認下さい。
渡辺徹
弁護士

監修

弁護士法人 北浜法律事務所 代表社員

京都大学法学部卒業
司法研修所修了(第45期)
弁護士登録(大阪弁護士会)
北浜法律事務所入所
北浜法律事務所パートナー就任
公認不正検査士取得
北浜法律事務所代表社員就任
京都大学法科大学院非常勤講師

松山元浩公認会計士・税理士
松山元浩
公認会計士・税理士

監修

公認会計士・税理士 松山元浩事務所 代表

関西学院大学法学部卒業
公認会計士登録
税理士登録
公認システム監査人登録
MOS(2003)認定登録
経営革新等支援機関認定
日本経営管理士認定